(月刊「丸」・昭和32年3月号収載)
〔昭和十六年十一月二十七日〕
四万トンの大艦赤城も、木の葉のように揺れている。舷窓を開けたとたんに、燦然と射し込むうららかな陽光。北太平洋の冬とも思えぬこの澄明。天気晴朗なれども浪高しとはこのこと。気圧は七七三粍(ミリ)。追風を受けて温かく、甲板に出て僚艦の姿なつかしく眺める人数も多い。
重油補給を受けている艦もある。
「キングジョージ」孟買(ムンバイ)に在泊するを認めたとの、邦人船長の情報あり。更に、「プリンスオブウェールス」ケープタウン寄港後極東に向かうと声明したという。極東方面に行動するもの「レパルス」「レナウン」「バラム」等か。
「ホノルル」第二哨戒隊の飛行艇二機、「ジョンストン」に飛び、更に「パルミラ」に跳ぶとの報あり。警戒を要す。