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葛城奈海 現実を知り、「戦」に備えよ

葛城奈海氏
葛城奈海氏

国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」をめぐる防衛力整備についての議論が連日紙面をにぎわしている。

先日、某駐屯地を訪れた際、自衛官から次のような話を聞いた。

「東富士演習場で演習をする際、高速道路代を節約するために、最寄りのインターからは乗らず、降りる際も演習場の近くではなく、手前で降ります。時間がかかる分は早く起きて出発時間を前倒しする。車両移動の時間が長くなるため睡眠不足や疲労でドライバーにかかるストレスも増えて、演習が始まる前に既に疲弊しています。帰路も同様で、帰りが遅くなる分、休む時間が短くなり、次の訓練に支障が出たり、場合によっては思わぬ事故やけがのもとになったりすることもあります」

予算不足から、「まさかそこまで」と思うようなしわ寄せが現場部隊に行っていることを改めて認識させられた。

そもそも、国を守るために存在している自衛隊がこうした公務で高速道路を走るのに、料金を払わなければいけないことからして、いかがなものか。根本的に制度を改める必要があるのではないか。

また、現在のように国民の目に触れる形で「防衛力整備計画」が定められても、現実には「別表」で示される装備品の「お買い物リスト」が丸々実行されることはない。基本的に5年ごとに出される「計画」よりも、各年度の予算が優先され、振り返ってみると「計画」からだいぶ削られた装備品しか自衛隊は入手できていないのだ。結果、他の機体から部品を外して「共食い整備」せざるを得なくなり、戦闘機や艦艇の稼働率は5~6割にとどまっている。弾薬も限られている上に、国内で部品や弾薬の製造ラインを維持するのも困難な状況が続いており、いざ戦闘が始まった場合、継戦能力が甚だ心もとないことは昨今指摘されている通りだ。

知るほどに、「これで本当に戦えるのか」という危機感が募る。「今年の漢字」には「戦」が選ばれた。ロシアのウクライナ侵攻で、ある日突然平和が破られる現実を私たちは目の当たりにした。今こそ、日本人も「戦」に真摯(しんし)に向き合い、備えるべきではないか。

【プロフィル】葛城奈海

かつらぎ・なみ 防人と歩む会会長、皇統を守る国民連合の会会長、ジャーナリスト、俳優。昭和45年、東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。近著に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。

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