(月刊「丸」・昭和31年10月号収載)
南国とはいえ、まだうら寒い日向美々津(宮崎県)の海岸は、今日--昭和十五年四月十八日--朝まだきから、全国から集まった観衆でいっぱいになっていた。
「盛んなもんですなあ」
突然--わたしは、後ろから呼びかけられてびっくりした。振り返ると、そこには、毎日新聞熊本特派員の五島弘恵君が、あの人なつこい笑顔で立っていた。
「何だ。貴君も来とったのですか」
「今日はああた、なんとしたって逃がされまっせんたい。貴君が佐世保鎮守府長官代理で参列なさるし、式は式で、日本の建国を祝う大切なことでっしょ。それにもうひとつ、ビッグニュースがありますたい」