ビジネスパーソンの必読書

『YOUR TIME ユア・タイム』『美しいジャバラを求めて』『AFTER STEVE アフター・スティーブ』

『YOUR TIME ユア・タイム』
『YOUR TIME ユア・タイム』

令和4年も終わりに近づいた。どんな年だっただろうか。「今年の一冊」を選んで、年末年始に再読してはいかがだろうか。(情報工場「SERENDIP」編集部 https://www.serendip.site/

時間感覚に8タイプ

『YOUR TIME ユア・タイム』鈴木祐著(河出書房新社・1672円)

多くの人が悩む「時間不足」の根源的な原因を探り、解消法を提案。

世の中にあふれる「時間術」のほとんどが、仕事のパフォーマンス向上に結びつかないことが、実験で確かめられているそうだ。それは個々の時間感覚が異なるからだと著者は指摘。

そして個人の時間感覚を8タイプに分類。判断基準は、将来「こうなるべき」という自己のイメージをどのように「予期」するか。また、過去の経験をどのように「想起」するか、だ。

例えば「容量過多」タイプは、将来の自己イメージを明確に予期できるが、そのイメージが多すぎるためキャパオーバーになり、いつも時間に追われて焦っている。また「怖がり」タイプは、過去の経験を正しく想起できるが、その記憶をネガティブに捉えがち。そのため「失敗したらどうしよう」と考え必要なタスクに手をつけられず、無為に時間を過ごしてしまう。

自分を知ることが時間不足解消の第一歩のようだ。

デジタルの波を超え

『美しいジャバラを求めて』永井規夫著(日刊工業新聞社・1650円)

旧式銀塩カメラに使われた蛇腹の専門メーカーが、デジタル化の波に負けず生き残った過程を描く。

『美しいジャバラを求めて』
『美しいジャバラを求めて』

昭和47年創業の株式会社ナベルは、2代目社長である著者の下、大胆に事業領域を広げていった。最初の転機は、60年代の円高で輸出が伸びず、打開策を模索したこと。医療機器のメーカーにアプローチし、CTやMRI装置のテーブルの高さを調整する蛇腹状のカバーの製作を受注。ニーズに応え、軽量かつ美しい製品を生み出す。

生き残りのポイントは未来志向なのだろう。自社の技術を時代遅れとして切り捨てず、「必要なときに伸び、不要なときに縮むもの」という蛇腹の本質を定義。その上で応用できるものを探していった。海外企業との提携交渉で「10年前、20年前の古い技術での競合よりも、10年先、20年先の協力関係を問題にすべき」だと説得したエピソードも。前向きに可能性を探る姿勢を見習いたい。

アップル成長の内幕

『AFTER STEVE アフター・スティーブ』トリップ・ミックル著、棚橋志行訳(ハーパーコリンズ・ジャパン・2640円)

共同創業者スティーブ・ジョブズ亡き後の巨大IT企業アップルの格闘を描くノンフィクション。最高経営責任者(CEO)ティム・クック氏と、デザイン担当責任者だったジョニー・アイブ氏が主人公だ。

『AFTER STEVE アフター・スティーブ』
『AFTER STEVE アフター・スティーブ』

2人は対照的だった。クック氏は在庫管理のプロで、製品開発にはタッチしていなかった。片やアイブ氏は「iMac(アイマック)」「iPhone(アイフォーン)」など同社の主要製品を手がけたデザイナーだ。

2人の間に明確な確執があったわけではないようだ。ただ、デザイナーチームのマネジメントを任されたアイブ氏は、不向きな役割に疲れ果ててしまう。一方、クック氏は革新的な新製品を発表していく従来のアップルの方針を変え、サービス業へとかじを切る。そして2019年、アイブ氏はアップルを退社する。

スティーブ・ジョブズがやってのけた「アートとビジネスの融合」がいかに難しいことなのか、深く考えさせられる一冊だ。

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