アジア発で躍進狙う「ディズニープラス」 日本の強みは「ストーリー」

アジア太平洋地域の新番組などが相次いで発表された「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」=11月30日、シンガポール(本間英士撮影)
アジア太平洋地域の新番組などが相次いで発表された「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」=11月30日、シンガポール(本間英士撮影)

来年創業100周年の節目を迎える米ウォルト・ディズニーが、自前の動画配信サービス「ディズニープラス」を武器に世界展開を強めている。アニメ映画など従来のコンテンツに加え、今後は日本や韓国などアジア発のオリジナル番組を強化。さらなる躍進を狙う。11月下旬にシンガポールで開催された作品発表イベント「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」に参加し、日本作品の〝現在地〟を探った。

「余白」に投資

ディズニープラスは2019年に始動し、日本では翌年にサービスを開始。Amazonプライム・ビデオなどと比べると後発組だが、ディズニーやピクサー、マーベルなどの人気作を抱えるのが強みだ。会員数は世界で1億6千万を突破した。

「私たちはコンテンツのホワイトスペース(余白)にコンテンツ開発を集中させている。日本のアニメ、韓国のドラマ、インドネシアのホラー…。特定の市場で人気の高いジャンルなど、より地域に密着した分野に投資していく」

ディズニーのアジア太平洋地域を統括するルーク・カン氏は、アジア各地などから集まった報道陣を前にこう語った。

「ディズニーが大切にするのは『ストーリー』。日本作品には大きな可能性がある」と語るディズニーのルーク・カン氏(本間英士撮影)
「ディズニーが大切にするのは『ストーリー』。日本作品には大きな可能性がある」と語るディズニーのルーク・カン氏(本間英士撮影)

同社は人口の多いアジアのユーザー開拓に力を入れる。ディズニープラスでのアジアのコンテンツ総時間は、前年比で8倍に増加。今回のイベントでも多くのアジア発のオリジナル作品が発表された。

日本の作品で関心を集めたのはアニメだ。異世界の冒険をアニメと実写を交えて描く「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」や、手塚治虫の漫画「火の鳥」をアニメ化する「PHOENIX:EDEN17」などが注目された。

日本制作陣も刺激

一方、「世界配信」は日本の実写作品の制作陣にとっても魅力的に映っている。閉鎖的な村が舞台のサイコスリラードラマ「ガンニバル」(28日配信開始)に主演する柳楽優弥さんは、「受ける刺激は間違いなくある」と語った。

「他のテレビドラマや映画に比べてクオリティーを優先させ、時間とお金をかけられた」と撮影を振り返ったのは、同作の片山慎三監督。「実写映画は興行的に苦しい状況が続いている。いかに他の国の人に見てもらえる作品を作るかが大事になる」と強調する。

ディズニーは今後、国をまたいだ作品作りを進める方針。今回発表された韓国のスリラードラマ「コネクト」の演出も、日本の三池崇史監督が手掛けた。実写作品で存在感を発揮する韓国勢について、三池監督は「韓国の俳優は情熱も、人間としてのエネルギーもすごい。演技力とはまた違う、役者にとって大事なものを持っている」と話す。

各国の独自色生かし

「アジア太平洋地域を一つの市場と見るのは難しい。いくつかの市場が集まり、(各国ごとに)ユニークな特色を持っている。だからこそ、各国の独自コンテンツが重要になる」

シンガポールで産経新聞などの取材に応じたカン氏は、独自作品作りの重要性をこう指摘した。

日本作品の強さについては「日本は世界的に見ても深い意味でのストーリー、知的財産を持っている。ただし、それらの多くは映像ではなく、漫画の形で存在している。私たちは〝井戸〟(ストーリーなどの水源)に近づきたい」と語る。今回、多くの人気漫画を抱える講談社との戦略的協業強化を発表したのも、その一環だという。

「韓国のドラマや映画も多くはウェブトゥーン(漫画)から来ている。アニメは世界で人気があり、日本は大きな可能性を秘めた国だ」

一方、以前はアジア各地で高い人気を誇った日本の実写作品は近年、かつての存在感を失っている。

「20~30年前、日本のドラマはアジアで非常に人気だったし、1話当たりの制作費も日本が一番高かった。今は韓国や中国と比べた場合、日本の制作費が一番安い。制作のレベルを上げるのが大事だ」

カン氏は「制作費が上がれば質も上がり、良い形で回転していく。そうすれば、日本の作品は世界に羽ばたくと思うし、われわれもそのシステムの一翼を担いたい」と意欲を示した。

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