配膳ロボット導入広がる 「ネコ型」客の9割支持、従業員負担軽減も

サンタクロースの装いをしたクリスマスバージョンのネコ型配膳ロボット(すかいらーくホールディングス提供)
サンタクロースの装いをしたクリスマスバージョンのネコ型配膳ロボット(すかいらーくホールディングス提供)

飲食店で商品をテーブルまで届ける配膳ロボットの導入が広がっている。店にとっては従業員の負担軽減や人手不足の対策につながり、新型コロナウイルス禍での非対面、非接触などのニーズにも応えられるだけでなく、利用者からは顧客満足度のアップなど、さまざまな効果が聞かれる。デジタル技術を活用し、競争優位性を高める事業変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の一環として、積極的に活用する動きも出ている。

ネコ型ロボットの支持は9割以上

「青く光るトレーから、料理をお取りくださいニャン」。千葉県成田市にあるファミリーレストラン「ガスト」では、サンタクロースの装いをしたネコ型配膳ロボットが料理をテーブルに届けていた。明るい声で「お注文、ありがとうニャン」とお礼するロボットに女性客は、「ありがとう。かわいいね」と笑顔で語りかけていた。

配膳していたのは、中国企業の普渡科技(Pudu Robotics)のネコ型ロボット「BellaBot(ベラボット)」。積載量は最大40キロで、複数テーブル分の料理を運ぶことができ、大きい目をパチパチさせたり、笑顔になったり、表情も豊かで、100種類以上の会話が可能だ。

同レストランを運営する外食大手、すかいらーくホールディングス(東京都武蔵野市)によると、2021年8月からしゃぶしゃぶ業態の「しゃぶ葉」の3店舗、「ガスト」4店舗で配膳ロボットの実験をスタート。10月に本格導入を発表し、上記店舗に加え、中華レストラン「バーミヤン」やファミリーレストラン「ジョナサン」などでも展開し、今年の年末までに約2100店舗で約3000台の導入を進めている。

「ガスト」でテーブルに料理を運ぶ配膳ロボット=東京都新宿区
「ガスト」でテーブルに料理を運ぶ配膳ロボット=東京都新宿区

配膳ロボットを導入した理由について、同社の広報は、顧客満足度の向上と従業員の働きやすい環境づくりを目的としたDXを積極的に推進した取り組みの一環で、「人とロボットの協働によるサービスの充実を図る取り組みを進めている」としている。

導入したことで、ロボットが配膳する時間に人でしかできないサービスや清掃業務を充実させることができ、従業員の歩行数が半減するなど、実際に作業負荷の軽減にも効果が出ているという。

また、利用客のアンケートでは、9割を超える支持を集めるなど顧客満足度の向上につながっているという。昨年の導入時から夏は夏祭りのバージョン、冬はクリスマスバージョンを実施し、サンタ姿の配膳ロボは、12月25日まで楽しむことができるという。

同社では、ロボット専任のインストラクターが全国の店舗に出向き、利用客や従業員の声をもとに、活用方法の研究を重ねているといい、「今後もロボット活用をさらに進化させていきたい」としている。

「ロボットと働ける」で求人応募14倍に

(出典元:DFA Robotics)
(出典元:DFA Robotics)

最先端ロボットの導入支援を行うDFA Robotics(東京都渋谷区)が12月に飲食店の店長105人を対象に行ったアンケート調査によると、配膳ロボットを導入している飲食店は17・1%だった。そのうち、「非常にそう思う」「ややそう思う」を合わせて約8割が「導入して良かった」と答えている。 導入した具体的なメリットとしては、「感染リスクが減少したから」と答えた人は7・1%だったが、「人手不足でも運営できるようになった」「生産性が向上した」と答えた人はともに64・3%だった。

同社は、ベラボットの販売代理店でもあり、ベラボットを利用している店舗からは、「1度に運べる量が4人前になったことで、(料理を)熱いうちにお客様に届けられるようになった」「『ロボットと一緒に働ける』というワードを募集記事に掲載したら、以前の14倍もの応募が殺到した」との声も寄せられたという。

同社の広報、本間茜さんは、「ロボットが人の仕事を奪うのではなく、可能性を伸ばす存在と位置づけ、ロボティクスソリューション(ロボットによる課題解決)を提供していきたい」としている。

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