近現代史研究家 阿羅健一氏 根拠なき政府見解は撤回を

新著を手にする近現代史研究家の阿羅健一氏=9日午前、東京都文京区(原川貴郎撮影)
新著を手にする近現代史研究家の阿羅健一氏=9日午前、東京都文京区(原川貴郎撮影)

昭和12(1937)年12月の南京攻略戦に参加した元兵士らへの取材を通じ、当時の南京の実像に迫ってきた近現代史研究家の阿羅健一氏(78)が、旧日本軍の南京入城から85年に当たる13日、「南京事件はなかった 目覚めよ外務省!」(展転社)を発刊した。阿羅氏は、外務省がホームページ(HP)に掲載している「南京事件」に関する記述に根拠となる資料が同省に存在しないことを突き止め、「根拠がないならば、HPの記述を撤回すべきだ」と訴えている。

85年前当時、中華民国の首都だった南京をめぐっては、旧日本軍が攻略、占領後の6週間で、市民ら30万人以上を虐殺したなどと中国は主張している。阿羅氏は当時の南京にいた高級将校や下士官、記者、画家、写真家ら300人以上への聞き取り調査や国内外の歴史資料の検証などを通じ、一般市民の虐殺はなかったと判断している。

一方、外務省は「南京事件」についてHP上で「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています」と説明する。ただ、阿羅氏が昨年3月、外務省に「根拠となった資料」の公開を求めたところ、今年1月になって「該当文書を確認できなかったため、不開示(不存在)とした」との通知があった。

阿羅氏は「明確な根拠がないまま政府見解がつくられた点は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話と酷似している」と指摘している。外務省はHPの記述の撤回や変更は予定しておらず、阿羅氏は国会議員とも連携し外務省に記述の撤回を働きかけることを検討している。

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