1軍での出場機会に恵まれないプロ野球選手の移籍を活性化させるために導入された「現役ドラフト」が初めて実施され、12選手の移籍が発表された。移籍が決まった選手の中には、楽天にドラフト1位で指名されて今季まで同球団でプレーしていたオコエ瑠偉外野手(25)もおり、高校時代に甲子園を沸かせた選手も含まれていた。初めて実施された現役ドラフトで〝掘り出し物〟の選手を獲得したのはどの球団か。
「右のスラッガー」候補を獲得した中日
現役ドラフトは①外国人選手②年俸5000万円以上の選手(1人に限り年俸1億円未満の選手も可能)③育成選手-などは対象外で、今月9日に非公開で行われた。
各球団は2人以上のリストを事前に日本野球機構(NPB)に提出。獲得希望選手をNPB側に伝え、獲得を希望する選手が最も多く集まった球団に最初の指名権が与えられる。例えば、指名順位1番目の球団Aが、「希望した球団Bの選手」を指名すると、次の指名権は球団Bに移る。以降も同様に、選手を指名された球団が指名権を獲得していく仕組みとなっている。今回実施された現役ドラフトでは入団3年目の若手から9年目の中堅まで顔をそろえた。
プロ野球や高校野球を取材しているスポーツライターの氏原英明さんが最も印象に残ったのは、DeNAから細川成也外野手(24)を獲得した中日だ。
細川は茨城・明秀学園日立高から2017年にドラフト5位で入団。長打力が持ち味で、右のスラッガーとして期待されたが、1軍での通算成績は123試合に出場し、打率・201、6本塁打、19打点にとどまっている。それでも氏原さんは「1軍で活躍の機会はなかったが、2軍ではスイングの強さが際立っている」と評価。年齢も24歳とまだ若く、「現在の中日は打撃力に課題があり、昨年のドラフト上位で獲得した同年代の選手とも競わせられる」(氏原さん)と指摘する。
さらに氏原さんは、ソフトバンクから大竹耕太郎投手(27)を獲得した阪神にも注目する。左腕の大竹は2018年、早大から育成ドラフト4位で入団。その後、支配下選手として登録された。20年のシーズン以来、1軍での白星は遠ざかっており、今季も2試合の登板にとどまったが、19年には5勝を挙げた実績もある。氏原さんは「最近は1軍での登板機会が少なかったが、(大竹の)獲得によって投手陣に厚みが増した」と評価した。
SNSの反応は好意的
今回の現役ドラフトの結果を受け、会員制交流サイト(SNS)でも話題に。ツイッターでは「あとはチャンスを貰えた選手達の努力と、チームの環境が合えば大成功」「他チームの方が出場機会が増えそうな選手が出ていたと思う」などとおおむね好意的な声が寄せられた。
ただ、指名権を優先的に得るためには、他球団にとって魅力的な選手をリストアップする必要もあり、制度に難しさがあるのも実情だ。1回目となった今回の現役ドラフトでは、2巡目以降の指名がなかった。
氏原さんは「プロ野球のトレード、移籍はどうしても負のイメージが強い。(移籍が)ポジティブな意味でとらえられるよう、今回の制度が定着することができれば」と話している。(浅野英介)