「神戸蒸溜所」生産スタート めざせジャパニーズウイスキー

ウイスキーの蒸留をスタートさせた神戸蒸溜所で、二次蒸留しているウイスキーの様子を見る職人=10月24日、神戸市北区(南雲都撮影)
ウイスキーの蒸留をスタートさせた神戸蒸溜所で、二次蒸留しているウイスキーの様子を見る職人=10月24日、神戸市北区(南雲都撮影)

神戸市北区の道の駅「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢(おおぞう)」内で、ワイナリーだった遊休施設を活用し、神戸の貿易会社が10月、新たに「神戸蒸溜所」を立ち上げ、シングルモルトウイスキーの生産を始めた。熟成させた銘柄の販売は3年先になるが、蒸留したばかりの原酒「ニューポット」を年明けにも発売する予定。将来的に地元の水やモルト(麦芽)を使った商品開発も検討しており、「ジャパニーズウイスキー」としての販売も見据える。担当者は「神戸発の本格ウイスキーを造りたい」と意気込んでいる。

神戸蒸溜所で最初に造られた無色透明のニューポットはアルコール度数60・6度。試飲させてもらうと、口や鼻の中が焼けるような感じがしたが、荒々しい味ながらフルーティな甘い香りが広がった。運営する貿易会社「グロースターズ」(神戸市中央区)の吉井直弘製造部長は「モルトの味がしっかりのっている。クセがあるので今後どう変化するのか楽しみ」と話す。

もともと設置されていたブランデー蒸留設備2基に加え、ウイスキーの単式蒸留器1基を新たに増設して10月17日に蒸留を開始。年間50キロリットルのウイスキーを生産する計画だ。

神戸蒸溜所はパーク内の「ブランデー・ビール館」の跡地を活用。一般財団法人神戸農政公社が運営する「神戸ワイナリー」(同市西区)が「神戸ワイン」ブランドで神戸産ブドウ100%のブランデーを造っていたが、販売不振などで平成7年以降、ここでの生産を中止。西区の施設では約4年前に生産を再開した。

グロースターズの張宇(ちょうう)社長が、低迷していた神戸ワイナリーのワインやブランデーを海外販売で復活させた縁もあり、昨年9月、神戸農政公社が募集した施設活用事業者に応募。市内農産物を活用した酒類醸造と商品開発の提案が認められ、事業者に選定された。

生産にあたって、神戸ワインや大手ウイスキーメーカーの技術者らから指導を受けた。バーボン樽(たる)を中心に、シェリーやミズナラ、サクラなど各種の樽で少なくとも3年熟成させる。早くも中国企業を中心に約10樽分を購入したいという話を受けているという。

ウイスキーの蒸留をスタートさせた神戸蒸溜所の樽=10月24日、神戸市北区(南雲都撮影)
ウイスキーの蒸留をスタートさせた神戸蒸溜所の樽=10月24日、神戸市北区(南雲都撮影)

国内で蒸留し、3年以上貯蔵したジャパニーズウイスキーの中には高値で販売されるものも。いずれも限定販売でサントリーの「山崎55年」は1本330万円で、宝酒造の「白河1958」は1本462万円で完売するなど高額でも人気が高い。

神戸蒸溜所は、環境省の名水百選に選ばれた布引渓流(神戸市中央区)の水や地元農家と協力して試験生産したモルトを使った商品の開発も検討している。

張社長は「神戸の地で熟成し、地名を冠した本格ウイスキーを造りたいとの思いが強かった。海外でも評価される神戸の代表銘柄に育てたい」と話している。

国内外で人気 新規参入相次ぐ

国内外でのジャパニーズウイスキーの人気の高さを背景に、ウイスキー造りに挑戦する動きが広がっている。酒造りにノウハウを持つ老舗の日本酒や焼酎メーカーだけでなく、新規事業者の参入も相次いでいる。

清酒大手の黄桜(京都市)は平成30年に兵庫県丹波篠山市で蒸留所を稼働させ、今年4月にシングルモルトウイスキーの限定販売を開始。担当者は「清酒とビールの生産で培った技術をいかしたウイスキー造りに挑戦したい」と話す。

麦焼酎「百年の孤独」で知られる「黒木本店」(宮崎県)も令和元年に蒸留を始めた。新規参入では神戸市の雑貨販売会社が昨年7月、「六甲山蒸溜所」を稼働させている。

国税庁によると、ウイスキーの製造免許場数は、平成23年度の74カ所から令和2年度に134カ所に。国内で製造されたウイスキーの出荷数量は2年度に約16万2千キロリットルと10年で6割増えた。財務省貿易統計によると、3年のウイスキー輸出額は461億円に上り、日本酒を抜いて酒類トップとなった。

ウイスキーを炭酸水で割る「ハイボール」人気で火がつき国内市場が拡大。世界的に権威のある品評会でも日本の銘柄が高く評価されて国内外で需要が高まり、原酒が不足する状況も起きている。

日本洋酒酒造組合が3年に定めた自主基準で、国内で蒸留し3年以上貯蔵しなければ「ジャパニーズウイスキー」と表示できない。収益化までに期間がかかるが、酒造技術のノウハウをいかすなどし、新たな商機として新規参入する動きが広がっているようだ。(吉国在)

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