ネット上にバーチャル商店街 神奈川の中小事業者支援機関が開設

神奈川県よろずバーチャル商店街の入り口付近
神奈川県よろずバーチャル商店街の入り口付近

中小事業者向けに経営相談を手がける公的機関の神奈川県よろず支援拠点が、商店の集客を支援しようとインターネット上の仮想商店街、県よろずバーチャル商店街を開設した。画像などで商品を紹介し、店内の雰囲気を体感してもらう。初めての店には入りづらいという人にも気軽に店の情報を知ってもらえるため、県よろず支援拠点は「新規顧客開拓の後押しにつなげたい」と意気込んでいる。(大島直之)

県よろずバーチャル商店街では入り口から4本の街路が伸びており、それぞれに10店ずつ連なる。県内の飲食店やパン・菓子店、雑貨店のほかクリーニング店、美容室など多彩な〝顔ぶれ〟となっている。画面に表示される矢印をクリックして移動し、入店する。

店内は360度画像で表示され、店員や商品などが映り込んでいる。端末上の操作で見たい向きを変えることができ、商品にあるマークをクリックすれば拡大画像や説明が見られる。

店によっては厨房(ちゅうぼう)に入って雰囲気を楽しめたり、動画で調理工程や店主のメッセージを視聴したりできる。各店ともホームページのリンク先が記載され、一部店舗は商品購入も可能だ。

神奈川県よろずバーチャル商店街の街路
神奈川県よろずバーチャル商店街の街路

バーチャル商店街は11月にオープン。かねてから売り上げ確保が経営課題となっているところで新型コロナウイルス禍の打撃が重なった事業者を後押しするため、県よろず支援拠点が県の産業振興団体「神奈川産業振興センター(KIP)」の支援を受けて今年春から準備を進めてきた。

バーチャル商店街のシステムは、バーチャル画像・映像技術を手がけるセキュアロジック(横浜市)が担当し、集客につなげるために店舗側と協議しながら店舗画面などを作り込んだ。

店舗側にも期待する声は大きい。自然・有機食品を量り売りする「バルクフーズ」(川崎市中原区)は県内に実店舗があるが、運営会社の伊藤弘人社長は「初めてのお客さんは店舗に入りづらいという声もある。来店せずに店の雰囲気を知ってもらえる」。

年老いた猫を預かる施設、老猫ホーム「うめねこ」(横浜市鶴見区)を運営する日比野敏章代表は「猫を預ける高齢の飼い主は下見ができないこともある。バーチャル画像で室内の様子を動き回るように見られるため、飼い主に安心感を感じてもらえる」と話す。

集客策は最近では交流サイト(SNS)の活用などもあるが、依然としてチラシ、ポスターといった昔ながらの手法に頼ることも多いのが実情だ。県よろず支援拠点としてもバーチャル商店街を新たな支援手法として育てたい狙いがある。

県よろず支援拠点の森智亮チーフコーディネーターは「仮想店舗でまずは見つけづらい、入りづらい店を知ってもらえる。今後は集客効果などを検証し、機能も充実させていきたい」と話している。

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