防衛財源に所得税活用案 復興方式で負担増回避 たばこ税組み合わせも

自民党税制調査会総会であいさつする宮沢洋一会長。左は鈴木俊一財務相=東京・永田町(矢島康弘撮影)
自民党税制調査会総会であいさつする宮沢洋一会長。左は鈴木俊一財務相=東京・永田町(矢島康弘撮影)

政府・与党が増額方針を示す防衛費の財源として、東日本大震災後に導入した「復興特別所得税」の一部を活用する案が浮上している。個人の税負担を増やさないよう同税を使うことで財源を確保する。財源確保は法人税の増税が軸となっているが、これに加え、たばこ税や相続税、資産による所得が多い富裕層に対する課税強化などとの組み合わせも検討する。

復興特別所得税は平成23年の東日本大震災後に、復興予算を賄うため創設した時限的な増税措置。令和19年末まで所得税額に2・1%が上乗せされ、税収は約4000億円に上る。このうちの一部を防衛財源に充てる案が検討される見通しだ。

政府・与党は、防衛力強化に向けた財源確保の議論を開始しており、5年度の与党税制改正大綱をまとめる15日までに増税する税目について一定の結論を出したい考えだ。だが、物価高が続く不透明な経済情勢下を踏まえ、与党内で増税に対する慎重論も多い。具体的な増税時期や税目の提示は来年以降に先送りされる可能性もある。

増税する税目を巡っては社会保障の財源となっている消費税が選択肢から既に消えており、岸田文雄首相は「個人の所得税の負担が増加する措置は行わない」と明言している。こうしたことから、追加負担がない復興特別所得税の活用案が検討されているとみられる。

財政を所管する財務省は防衛力強化に必要とされる1兆円強の税財源について、軸となる法人税の増税だけでは賄えないとみている。首相の意向を踏まえ、復興特別所得税の活用や、国民負担の小さい税目のわずかな税率引き上げや転用の組み合わせで、国民の理解を得たい考えだ。

たばこ税や相続税、資産による所得が多い富裕層への金融所得課税の強化などに関しては、「嗜好(しこう)品であるタバコ、主に富裕層が対象となる相続税や資産課税への増税は、世論の反発は少ない」(財務省関係者)とみる。

特にたばこ税は、国防費増額の財源にスウェーデンで税率引き上げており、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)などが財源案として提言している。また、1億円を境に非上場株式などの譲渡所得が多い高所得者の税負担が減少する「1億円の壁」の問題が指摘されており、この機会に富裕層に相応の負担を求める狙いがあるとみられる。

ただ、税収が10兆円を超える法人税などの基幹税に比べ、これらの税収は1兆~2兆円程度の規模。これらの税目から薄く、広く徴収しても、防衛力強化に必要な1兆円強の税財源には小粒で、基幹税の増税が必要との見方が有力だ。

しかし、自民党安倍派を中心に法人税の引き上げには、企業負担が増すとする意見も多い。西村康稔経済産業相は9日の閣議後会見で、「このタイミングでの増税は慎重にあるべきだ」と指摘。公明党内でも統一地方選挙が来春に控える中、「増税論議は控えるべきだ」(同党税制調査会幹部)との声も相次ぐ。

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