クモは生活の中でさまざまに自前の糸を使いこなしている。長い進化の過程で培われてきたその性質は軽量であることに加え、鋼鉄を超えるタフネス(靭性=じんせい)、ナイロンより高い伸縮性など、さまざまな面で非常に高性能だ。高機能で環境負荷の少ない繊維材料として、その再現の取り組みが進むが、理化学研究所などの国際研究チームは今秋、クモ糸のタンパク質構造と物理的性質(物性)の情報を1000種以上も網羅する世界初のデータベースを立ち上げた。これまで未報告のものも多数収録されたという。最強の人工クモ糸の実現はなるか。その試みに迫った。
軽量、強度、伸縮性に優れる
クモは糸使いの達人である。一言でクモの糸といっても均一ではない。彼らは数種類の性質の違う糸を巣の構成や移動などの用途により使い分けている。巣を張るクモも張らないクモもいるが、すべてのクモが糸を作っており、種類によって多様性がある。