地対艦ミサイル部隊増強 陸自2千人が海空へ 安保3文書骨子案判明

米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター)
米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター)

月内に改定する「安保3文書」の骨子案では中国や北朝鮮、ロシアを「挑戦」や「脅威」と位置づけ、防衛力の抜本的強化する方針を打ち出した。「反撃能力(敵基地攻撃能力)」に関しては、射程を1千キロ以上に延伸する12式地対艦ミサイルの部隊を現行の「防衛計画の大綱」で定めた5個から7個に増強。航空自衛隊のみが保有していた無人機部隊は陸自と海自にもそれぞれ新設する。また、陸自の定員約2千人を海空に振り向け、総定員数は現行の24万7千人を維持する。

最上位文書の「国家安全保障戦略(NSS)」では、インド太平洋地域の安保上の課題を中国、北朝鮮、ロシアの順に記載。中国は「これまでにない最大の戦略的な挑戦」とし、一方的な現状変更の試みに「毅然(きぜん)と対応」すると強調した。「国家防衛戦略」では今年8月の中国による弾道ミサイル発射に触れ、「脅威と受け止められた」と表記した。

一方、NSSでは中国との間で不測の事態を回避するための枠組み構築や、軍縮の働きかけも盛り込んだ。台湾に関しては、基本的な価値を共有する「重要なパートナー」と位置づけたが、「非政府間の実務関係」は維持するとした。

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮は「脅威」と表現。ウクライナ侵攻を続けるロシアは、欧州方面での「脅威」としつつ、インド太平洋において「安全保障上の強い懸念」とした。韓国は「地政学的にも我が国安全保障にとっても極めて重要な隣国」と記述した。

民間タンク借り上げ

令和5年度以降5年間で約43兆円が確保される防衛力整備経費のうち、「スタンド・オフ防衛能力」は、現行の「中期防衛力整備計画(中期防)」の約2千億円から約5兆円に増額する。

具体的には、米国製巡航ミサイル「トマホーク」を念頭に外国製ミサイルを取得。12式地対艦ミサイルを改良し、艦艇、航空機からも発射可能とする。潜水艦からの発射システムも整備する。高速滑空弾や極超音速誘導弾の開発も進める。

戦闘を継続する能力(継戦能力)に関しては、部品不足が常態化し、整備中の機体から別の機体のために部品を外す「共食い整備」を余儀なくされる状態を令和9年度までに解消するとした。燃料タンクを整備し、民間燃料タンクを借り上げる。

弾薬補充を急ぎ、陸自約90棟、海自約40棟の計130棟を新設。また、南西地域に補給支処を新たに設ける。これまでは不要になった弾薬を廃棄する経費が確保されず、火薬庫が満杯になっていたことを踏まえ、「不要弾薬の廃棄促進」も盛り込んだ。

大幅な組織改編

宇宙・サイバー・電磁波など「新たな領域」での戦いを強化するため、組織改編も進める。

海自は護衛艦と機雷を除去する掃海艦を一元管理するため「水上艦艇部隊」に改編する。情報戦に関する能力を陸空自や海上保安庁と融合するため、既存部隊を見直し「情報戦基幹部隊」を創設。配下に「作戦情報群」「海洋情報群」「サイバー群」を置く方向だ。

空自は「宇宙作戦群」を「宇宙作戦集団」に格上げし、配下に「宇宙作戦団」「宇宙作戦指揮群」「宇宙作戦情報隊」を置く。空自の名称も「航空宇宙自衛隊」に改称。敵のミサイル射程圏内で情報収集するため無人機を導入し、情報収集機能強化のための「作戦情報団」も設ける。

常設の統合司令部を創設することも明記した。サイバー防衛従事隊員を約2万人とし、専門部隊を約4千人に拡充する。陸自は沖縄防衛を担当する第15旅団を増強するとともに、島嶼部の電子戦部隊を強化し、「対空電子戦部隊」を新編する。(市岡豊大、杉本康士)

10年後に「遠方で脅威阻止」 「安保3文書」骨子案判明

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