自動車評論家などが選んだ最も優れた車に贈られる「2022ー2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」は12月8日に最終選考会が開かれ、日産自動車と三菱自動車が共同開発した軽の電気自動車(EV)「サクラ」と「eKクロスEV」が受賞した。審査員60人の約4割から最高評価を獲得し、軽では初の快挙を達成した。一方、日本の乗用車市場に約12年ぶりに再参入した韓国・現代自動車のEV「IONIQ5(アイオニックファイブ)」は1人の審査員からしか最高評価を得られず、日韓EV対決は日本勢が圧勝する結果となった。
審査員23人が軽EVを最高評価
日産のサクラと三菱自のeKクロスEVは企画と開発を日産が担い、三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)で生産する「兄弟車」。1回の充電で走れる距離は約180キロで、国の補助金や自治体独自の補助金を使うと200万円未満の手頃な価格で購入できる。
最終選考会では、1次選考を通過した「10ベストカー」を対象に審査員60人が採点。各審査員の持ち点は25点で、このうち10点を最も高く評価した車に与える形式で行われた。
サクラとeKクロスEVは23人から最高評価の10点を得て、総得点数は399点。2位のホンダ「シビックe:HEV/シビックタイプR」(320点)、3位のトヨタ自動車「クラウン」(236点)などを大きく引き離した。
日産の受賞は2年連続6度目。三菱自の受賞は26年ぶり5度目だ。
「黄色いナンバープレート」を誇りに思えるEV
動画サイト「ユーチューブ」では最終選考会と授賞式の模様を生中継。自動車レースの実況も務めるラジオDJのサッシャさん、テレビの冠番組でさまざまなゲストの愛車を紹介するお笑いコンビ・おぎやはぎが司会を務めた。会場では各審査員が採点理由を語るVTRが流された。
フリーランスライターの御堀直嗣氏は「性能・装備・価格といったあらゆる面で調和がとれており、黄色いナンバープレートを誇りに思える電気自動車」と絶賛。モータージャーナリストの岡崎五朗氏は「海外展開を視野に入れているのも大きなポイント。日本の軽自動車が世界に羽ばたくことを期待している」と語った。
韓流絶賛の安東アナに、おぎやはぎ「腹立つ」「いらっとする」
最終選考には海外メーカーのスポーツ用多目的車(SUV)タイプのEVも残ったが、独BMWの「iX」に10点を与えた審査員はたったの2人。現代自の「IONIQ5」に10点を与えたのは、自動車愛好家でトヨタの情報サイトでコラムを連載する元TBSの安東弘樹アナウンサーだけだった。
安東アナはコメントで「革新的な内外装、走行性能、実用的な航続距離、そして装備も満載。さらには運転も楽しい。とどめは、圧倒的なコストパフォーマンスです」と絶賛した。
車の魅力を簡潔にまとめた安東さんの得意げな語り口調に、おぎやはぎの矢作兼さんは思わず「なんか、ちょっと腹立ちますね」とツッコミを入れ、相方の小木博明さんも「なんで、いらっとするんでしょうね」と苦笑いしていた。
中国BYDも参入で競争激化
しかし、IONIQ5は6位にランクイン。輸入車の頂点となる「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」をアジア勢で初めて受賞する快挙を達成した。
現代自は令和4(2022)年2月、販売不振を理由に撤退していた日本の乗用車市場に約12年ぶりに再参入すると発表し、5月に販売を開始。今回の受賞が追い風になる可能性がある。日本法人の趙源祥社長は「事業展開を順調に進めることができ、顧客からも高い評価を得ている。今後も日本市場で顧客の声に耳を傾け、真摯に、謙虚にモビリティーの未来に貢献できるよう尽力する」とコメントした。
中国のEV大手・比亜迪(BYD)も令和5年1月31日に発売するSUVタイプのEV「ATTO3(アットスリー)」(440万円)を皮切りに、日本のEV市場の開拓を図る。
競争の激化が見込まれ、日本勢はいつまでも勝利の美酒に酔っている場合ではなさそうだ。(宇野貴文)
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「2022–2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」得点表
1位 サクラ/eKクロスEV(日産自動車/三菱自動車) 399点
2位 シビック e:HEV/シビックタイプR(ホンダ) 320点
3位 クラウン(トヨタ自動車) 236点
4位 CX-60 e-SKYACTIV D3.3(マツダ) 141点
5位 エクストレイル(日産自動車) 84点
6位 IONIQ5(現代自動車) 75点
7位 フェアレディZ(日産自動車) 72点
8位 アルカナ(ルノー) 70点
9位 iX(BMW) 45点
10位 レンジローバー(ジャガー・ランドローバー) 30点
11位 アルト(スズキ) 28点