雑草茂る暴力団事務所の跡地 民間売却後も認定外れず 新たな本部はどこに…

兵庫県公安委員会が絆会の「主たる事務所」としている更地=令和4年11月15日午後、同県尼崎市
兵庫県公安委員会が絆会の「主たる事務所」としている更地=令和4年11月15日午後、同県尼崎市

兵庫県尼崎市にあった指定暴力団「絆会」の本部事務所が昨年10月に民間事業者に売却され、所有権が移転したにもかかわらず、警察当局に暴力団の「主たる事務所」(本部事務所)として認定されたままになっていることが9日、分かった。指定暴力団と位置付けるには法令上、事務所の特定が要件となっているが、組織形態が流動的なこともあり、現実が反映されないままとなっている。

日本最大の暴力団・山口組の分裂(平成27年)を発端に、指定暴力団となった絆会(金禎紀(きんよしのり)=通称・織田絆誠(よしのり)=会長)。準構成員を含めて約230人(昨年末時点)の勢力を持つ組織の主たる事務所として国家公安委員会が認定している尼崎市内の住所地を訪ねると、雑草が生い茂る更地が広がっていた。

大阪府との境に近く、周辺には工場や民家が立ち並ぶこの土地は、警察庁や大阪府警、各地の「暴力団追放センター」(暴追センター)の一部HPにも、絆会の本部事務所として掲載されている。

ここにはかつて、絆会の前身にあたる任侠山口組の2次団体「真鍋組」の事務所があった。国家公安委は30年2月、真鍋組の事務所を任侠山口組の本部事務所と認定。この事実をもとに、管轄する兵庫県公安委が翌3月、同組を指定暴力団に指定した。

しかし、近隣住民の代理として「暴力団追放兵庫県民センター」(神戸市)が同事務所の使用差し止めを求める申し立てを行い、同9月に神戸地裁が事務所の使用を禁じる仮処分を出した。これを受け同センターなどの仲介により民間事業者が事務所の土地を購入、昨年12月に建物は解体されている。

暴力団対策法は、本部事務所や組の名称などに変更があった場合、管轄の各公安委が「官報により公示しなければならない」と定める。実際この間に任侠山口組は絆会に名称を変更、そのことは公示されている。

にもかかわらず、本部事務所の場所はなぜ変わっていないのか。

暴対法は指定暴力団について、本部事務所の所在地の公安委が指定すると規定しているが、本部事務所については都道府県警の情報収集に基づき、国家公安委が認定する。つまり指定暴力団として規制の網をかけるには、まずは本部事務所を特定しなければならない仕組みになっているのだ。

捜査関係者によると、警察当局は絆会の本部事務所の変更を模索しているが、新たな事務所の特定作業が難航。このため民有の更地が事務所として認定されたままという異例の事態を招いている。

絆会は大阪市中央区にも事務所を構えているが、現在は使用を控えているとされる。また神戸市長田区にある織田会長の自宅を認定することも検討されたが、当局のこれまでの運用では組員の自宅を事務所と扱ってこなかった経緯があり、「整合性が取れない」(捜査関係者)とする。

本部事務所の認定には使用実態の解明が不可欠で、会合の開催など目立った動きがない場合、特定は難しい。一方、昨今の社会情勢や当局の厳しい取り締まりにより、暴力団にとっては組事務所の維持や新設が難しくなり、「そもそも事務所を持つメリットが薄れている」(同)という。

兵庫県警の幹部は、絆会の本部事務所と認定されている民有地について「将来商業施設や民家が建設される可能性もある。いつまでも暴力団事務所として公表し続けるわけにはいかない」といい、「本部事務所を早期に特定し認定につなげたい」と話す。

暴力団事務所を巡っては大阪でも、特定抗争指定暴力団山口組の直系団体織田組の事務所(東大阪市)が暴追センターの起こした訴訟により使用差し止めとなった。その後、事務所はセンターが買い取り、建物は取り壊されて更地になっている。織田組のケースでは別の施設が本部事務所に指定されていたため、指定を巡る問題は起きていない。

元警察官僚で京都産業大の田村正博教授(警察行政法)の話「30年前の暴対法成立当時は対面の会議なしに意思決定することは不可能だったが、現在はスマートフォンなどで簡単に連絡を取りあえる。本部事務所の特定が難しい場合は、組長の居住地によって管轄の都道府県公安委が(指定暴力団の)指定作業を行えるよう暴対法を改正するなど時代に合わせた対応が必要だ」

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