「深刻な顔で歩いている…」と、言われた。
「えっ! 誰が?」と聞き返したら、「あなたよっ」と。
びっくりした。
「ぼーっとしている」とか、「ウワノソラでいる」とかは、よく言われてきた。
が、「深刻な顔」と言われるのは、きわめて珍しい。
けれど、よく考えてみれば、確かに、目下私は、頭の中が混乱中。かなり状況は深刻な事態なのかもしれない。
それもこれも、たぶん、年齢のせい。
以前のように、いろんなことを同時に進行させながらこなす、なんてことができなくなったのだ。
一つ一つ、順番に自分のやるべきことを慎重に乗り越えていかないと、次には進めないわね、という感じ。
年末進行と呼ばれている目の前の仕事も乗り越えられないかも。
そんなわけで、パドル体操も人形劇の練習も原っぱの大掃除も、全部、いったん、やめにした。
そして、まずはやり残していることの一つ、前年の確定申告をクリアすることに。
このなぜかやみくもにてこずり続けている私の確定申告問題は、今や東京から那須町へと移っている。
東京の税務署から、すでに提出してある申告書の控えを持って、那須の税務署に相談へ行くようにと言われている。
が、しかし。
那須町内には税務署がなかった。調べたらお隣の大田原市の税務署が管轄。
電話で相談の予約をとったら、「電車を使うと大変ですよ。自分の車でカーナビの通りに来た方がラクですよ」と教えられた。
でも、果たして約束の時間通りにこの私が行けるのか?
方向音痴で、地図の読めない女の私が…。
所要時間や駐車場も確認せねばならないし。
というわけで、万全を期し予行練習を決行。
その帰り道、車を走らせながら、こんなふうに何をやるにも予行練習が必要な「二度手間人生」をなんと言えばいいのだろうか、と思った。
老いて1人で生きる、ということは、思っていた以上に甘くはない、そう実感するこの頃だ。
(ノンフィクション作家 久田恵)