家族がいてもいなくても

(762)老いて1人で生きる大変さ実感

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

「深刻な顔で歩いている…」と、言われた。

「えっ! 誰が?」と聞き返したら、「あなたよっ」と。

びっくりした。

「ぼーっとしている」とか、「ウワノソラでいる」とかは、よく言われてきた。

が、「深刻な顔」と言われるのは、きわめて珍しい。

けれど、よく考えてみれば、確かに、目下私は、頭の中が混乱中。かなり状況は深刻な事態なのかもしれない。

それもこれも、たぶん、年齢のせい。

以前のように、いろんなことを同時に進行させながらこなす、なんてことができなくなったのだ。

一つ一つ、順番に自分のやるべきことを慎重に乗り越えていかないと、次には進めないわね、という感じ。

年末進行と呼ばれている目の前の仕事も乗り越えられないかも。

そんなわけで、パドル体操も人形劇の練習も原っぱの大掃除も、全部、いったん、やめにした。

そして、まずはやり残していることの一つ、前年の確定申告をクリアすることに。

このなぜかやみくもにてこずり続けている私の確定申告問題は、今や東京から那須町へと移っている。

東京の税務署から、すでに提出してある申告書の控えを持って、那須の税務署に相談へ行くようにと言われている。

が、しかし。

那須町内には税務署がなかった。調べたらお隣の大田原市の税務署が管轄。

電話で相談の予約をとったら、「電車を使うと大変ですよ。自分の車でカーナビの通りに来た方がラクですよ」と教えられた。

でも、果たして約束の時間通りにこの私が行けるのか?

方向音痴で、地図の読めない女の私が…。

所要時間や駐車場も確認せねばならないし。

というわけで、万全を期し予行練習を決行。

その帰り道、車を走らせながら、こんなふうに何をやるにも予行練習が必要な「二度手間人生」をなんと言えばいいのだろうか、と思った。

老いて1人で生きる、ということは、思っていた以上に甘くはない、そう実感するこの頃だ。

(ノンフィクション作家 久田恵)

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