【ワシントン=坂本一之】バイデン米政権が、中国など二酸化炭素(CO2)排出量の多い国から輸入する鉄鋼やアルミニウムについて、高関税を課す温暖化対策の新たな多国間枠組みを欧州連合(EU)に提案していることが明らかになった。米紙ニューヨーク・タイムズなどが9日までに報じた。バイデン大統領は11月の米中首脳会談で気候変動問題を議論していくことで一致したばかりで、中国の反発も予想される。
バイデン政権が検討している案では、枠組みの参加国は鉄鋼やアルミニウム生産のCO2排出で一定の基準を満たすことが求められる。市場価格を押し下げる過剰生産をしないことや、国営企業の活動を制限することも参加の条件となる。
CO2排出の基準を超える国からの鉄鋼やアルミニウムの輸入品に高関税を適用するというもので、EUに提案した文書は米通商代表部(USTR)が起草した。環境対策を促進しながら米国や欧州の産業成長を図る戦略だという。
検討は初期段階で、EU側は慎重に判断するとみられ、協議が進むかは不透明だ。議会や産業界との調整も大きな課題となる。
バイデン氏は就任後初となった先月の習近平国家主席との対面会談で、米中両政府間の対話を進めていくことで合意している。ただ、中国が環境対策の強化に簡単に応じる可能性は低い。米欧市場で中国製品の価格競争力が関税によって損なわれる環境をつくることで、中国政府に圧力をかける戦略とみられる。