日本サッカー新時代

㊦堅守速攻だけでは限界 ボール保持との併用、壁破るカギ

【カタールW杯2022日本代表対クロアチア代表】後半、競り合う日本代表・冨安健洋=アルジャヌーブ競技場(撮影・村本聡)
【カタールW杯2022日本代表対クロアチア代表】後半、競り合う日本代表・冨安健洋=アルジャヌーブ競技場(撮影・村本聡)

1次リーグE組最終戦でスペインを2-1と逆転で破り、首位突破を決めた直後だった。決勝点の田中碧(デュッセルドルフ)は表情を曇らせ、つぶやいた。「やりたいサッカーができているかといったらそうではない。ただ、このW杯を勝つという意味で、現時点ではこれが最善策」

守りに軸足を置いて逆襲を狙う堅守速攻が田中の言う最善策。ボール保持率はスペイン74%、日本17%で圧倒的に支配された。勝利チームではW杯史上最低の数字だという。ドイツに2-1で逆転勝ちした1次リーグ初戦も保持率はドイツ65%、日本24%だった。日本は「弱者」の戦いに徹し、「2強2弱」とされたE組で「2強」を倒した。

葛藤はあった。森保一監督は「ボールを渡さなければ守備で疲れない」と、試合をコントロールする戦いを求めてきた。9月のドイツ遠征で流れが変わった。約10日間、寝食をともにして前線からのプレス、ボールの奪いどころを細部まで確認した。その中で堅守速攻に手応えを得た。長友佑都(FC東京)が「冷静に考えてもボールを握って勝つ力はまだない」と話したとおり、現状を見極めた戦いでの16強だった。

前回の2018年ロシア大会は好対照で、「強者」の戦いを追い求めた。ボールを保持して、主導権を握りながら積極的に攻撃を仕掛けた。

前回の「強者」と、今回の「弱者」、どちらの戦い方でも8強入りはかなわなかった。前回は決勝トーナメント1回戦で2点を先行しながら終了間際に決勝点を許し、ベルギーに2-3と逆転負け。今回も1-1からのPK戦で3人が外しクロアチアに敗れた。冨安健洋(アーセナル)は「いつまでもアジャストする(相手に合わせる)サッカーをやっていると成長はない」と「弱者」の戦いの限界を表現した。

苦い記憶がある。守備的な戦いで16強入りした10年南アフリカ大会後、選手は冨安と同じ思いを抱いた。攻撃的な姿勢で臨んだ14年ブラジル大会は1次リーグで1勝もできなかった。試合展開で「強者」にも「弱者」にもなれる柔軟性が、壁を破るカギになる。

もう1つの課題は「個」のレベルアップ。W杯代表で海外組19人は史上最多だった。まだ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)などで躍動する選手は一握り。田中は全員がCL上位進出クラブに属し「なおかつ、そのチームの駒ではなく中心でやらないといけない」と言い切った。8強をつかみとる時間が始まった。(川峯千尋)

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