大手町の片隅から

乾正人 コロナにかかって考えたこと

政府も国会もこの3年間、何をやってきたのか=東京都千代田区、国会議事堂(鈴木健児撮影)
政府も国会もこの3年間、何をやってきたのか=東京都千代田区、国会議事堂(鈴木健児撮影)

馬券はからきし当たらないのに、新型コロナウイルスに当たってしまった。「忘年会の前倒し」と称して、毎夜の如(ごと)く紅灯の巷(ちまた)に繰り出したバチが当たったようである。

ワクチンの副反応いやさに、3回目を打ってから半年以上も接種間隔をあけてしまったのも敗因だ。油断大敵とは、コロナのためにあるような言葉である。4回目の接種がまだの中高年の皆さんには、なるべく早く打たれるようお勧めする。かかってしまうと、中国・武漢発のウイルスが普通の風邪でない事実を、身をもって知ることになる。

何しろ倦怠(けんたい)感が半端ない。熱発はワクチン効果か38・1度にとどまった。しかし、発症から3日間は、記事を書くどころか、うまいモノを食いたいとか、冷えたビールをグイッと飲みたいとか、万馬券を仕留めたいといった欲望が一切わかなかった。

コロナで悟りを開いた、と書けば聞こえはいいが、くだらない日常ともまぼろしともつかぬ夢を見ては目が覚める「酔生夢死」状態になったのである。昼夜逆転していたおかげで、午前4時からキックオフされたW杯サッカー日本対スペイン戦も、途切れ途切れに見られたが、「再び歓喜に包まれました」というアナウンサーの雄叫(おたけ)びも「きっと夢を見ているんだろう」と感じたほどだ。

何の役にも立たぬ町医者

コロナにかかって、良かったこともある。これまで見えていなかった光景を目の当たりにできたからだ。

近所に数ある医院が、コロナ治療には何の役にも立たなかった。発熱して何カ所か電話したが、慇懃(いんぎん)無礼に診療を断られた。オンライン診療を実施している医院も増えたはずなのだが、電話した医院のうちやっているところはなかった。発熱外来をやっている医院を教えてくれるところもあったが、遠くていけない。

医者側にしてみれば、日頃つきあいのない患者にこられても薬もろくになく、うつされるリスクを考えれば、断るのも無理はない。

世の中にはコロナ患者を積極的に受け入れている「令和の赤ひげ」先生も少なからずおられるが、患者が殺到して予約がとれたころには回復した、という笑えない話もあるそうな。しかもコロナ後遺症をしっかり診察してくれる医院も少ない。

政府と国会は無策百貨店

新型コロナは、一昨年初頭のパンデミック以来、患者数の全数把握が必要な感染症「2類相当」のまま。保健所の業務と権限が肥大化しただけで、患者はほったらかし。いまだ季節性インフルエンザと同じ「5類」に転換していない政府の無策が、「コロナは診なくていい」という免罪符を医者たちに与えている。

「5類」にすれば、ワクチン接種も治療薬も有料になるというが、コロナに限って終息まで原則国費負担とする特別法を国会で通せばいいだけの話。政府も国会もこの3年間、何をやってきたのか。

折しも「かかりつけ医」の論議がヤマ場を迎えているが、持病のある患者が対象で、しかも医師が「継続管理が必要」と認めた患者のみというから、骨抜きもいいところ。患者があらかじめ受診する医院を決める「登録制」にしなければ、新たな感染症が襲っても何の役にも立たない。医は仁術であって算術ではないはずだ。ではまた、再来週のこころだぁ!!(コラムニスト)

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