主張

NHK新会長 改革止めず公正な放送を

NHKの新会長に元日本銀行理事の稲葉延雄氏が決まった。来年1月に就任する。6代続けての外部からの起用で、同局の改革がなお道半ばであることを示している。

稲葉氏は「国民の皆さまから信頼をいただくことが大事」などと述べた。公共放送としての信頼に何よりも欠かせないのは、公正で良質な番組づくりである。それを支える組織統治(ガバナンス)など、さらなる改革に指導力を発揮してほしい。

同局では、平成16年に職員による多額の制作費着服などの不祥事が相次ぎ、改革が始まった。会長に外部から人を得たのは、内部昇格では思い切った改革が困難とみられたからに他ならない。

問題の背景とされるのが、安定した受信料収入に甘えてコスト意識やモラル欠如を招く体質だ。それが現場任せでチェックが利かない態勢にもつながってきた。これらが払拭されたとは言い難い。

NHKの受信料収入は年間約7千億円で、事業収入の9割超を占める。一般企業の内部留保に当たる「繰越金」の残高は令和3年度末で2200億円を超える。

「もうけ過ぎ」との批判を受けて、受信料については、地上波だけの「地上契約」、地上波と衛星放送(BS)が視聴できる「衛星契約」を来秋からともに1割下げることを決めている。

これは過去最大幅の値下げというが、一方で「さらなる値下げの原資が確保できるための努力が期待される」(松本剛明総務相)と厳しい目も注がれている。

一部でコストカットによる番組の質低下などの懸念もあるようだが、これは改革の趣旨をはき違えている。効率化と良質な仕事(番組づくりなど)の双方の追求は民間ならあたり前のことである。

総務省の有識者会議ではインターネット時代の公共放送や受信料制度が議論されている。NHKのあり方、役割が一層問われるときだ。同局の独占、肥大化が過ぎれば放送メディアの健全な発展がかなわないのはいうまでもない。

稲葉氏は「独立性が求められる日銀での経験は、不偏不党を掲げるNHKでも重要。NHKの使命にはある種の親近感を抱いている」とも語った。くれぐれも、お役所的体質に親近感を抱かぬよう願いたい。求められているのは、一段の値下げなどにつながる改革を断行する覚悟と行動である。

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