10月23日から約1カ月間、戦禍のウクライナに出張した。ロシア軍は10月上旬から首都キーウ(キエフ)を含むウクライナ全土への空爆を再開したが、主な標的は民間用の電力施設だ。露軍が前線で劣勢になるなか、防備の手薄な民間施設を破壊して国内の混乱を引き起こす狙いが浮かび上がるが、非軍事施設への意図的な攻撃は戦争犯罪にあたる。ウクライナ政府は全土に避難施設を開設するなど対応を急ぐが、国際社会は人道危機を防ぐために、一刻も早くロシアの蛮行を止める手段を講じなくてはならない。
「すぐに逃げるべきだ」。11月15日、キーウ市内でウクライナ最高会議(議会)議員へのインタビューを終えた直後。空襲の危険を伝える携帯のアプリがけたたましく鳴り響き、同行していたウクライナの元外務官僚は表情を変え、記者にそう警告した。
治安機関筋から「15、16日に、相当規模の空爆がありうる」との情報を得ていたという。即座にタクシーで移動し、ホテルのシェルター(避難所)に入ると、30分ほどでキーウ市中心部で被害が相次いだ。取材現場から数キロの地点の住宅が破壊された。この日の攻撃は過去最大規模で、本社に速報を打電した。