主張

中国の核1500発へ 米は核抑止力の充実図れ

米国防総省が中国の軍事・安全保障に関する年次報告書を公表し、2035年までに約1500発の核弾頭を保有する可能性が高いという分析を明らかにした。

同省によれば、運用可能な中国の核弾頭は21年に400発を超えたとされる。中国が核戦力を質量ともに強化し、米露と並ぶ「第3の核大国」の地位を固めようとしているのは明白だ。

米国が自国と同盟国を核の脅威から守るため、核抑止力の充実を図らざるを得ない時代になったということだ。米国はその対応に万全を尽くさなくてはならない。

中国などの核の脅威の最前線にいる日本も、近く改定する国家安全保障戦略などで脅威への対応を示し、核抑止力を高める日米同盟の深化を加速させるべきだ。

米国は10月に公表した核政策指針「核態勢の見直し」でも、米国が「30年までに史上初めて2つの核大国に対峙(たいじ)することになる」として中国への警戒感を示した。

中国の核戦力が米国と肩を並べると、日本など同盟国に提供する拡大抑止(核の傘)の実効性が揺らぎかねない。米国が日本を守るため核使用に踏み切ると、中国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)での米本土への核攻撃で反撃するリスクがさらに高まるためだ。

報告書はまた、中国が探知や迎撃の困難な極超音速滑空兵器(HGV)などの運搬手段の開発を進めているほか、ICBM用のサイロ(地下格納・発射施設)の建設を続け、その数が少なくとも300に達したと指摘した。米本土に到達可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発と配備も進めているとしている。

米国は、こうした動きに対応できる抑止力の充実に向けて、保有する核兵器の近代化を積極的に進め、HGVを含む新たな運搬手段の開発にも取り組むべきだ。

中国は、自衛のために最小限の核戦力を持つとし、他国から核攻撃を受けない限り核兵器は使わない「核の先制不使用」を原則としていると主張する。だが、一連の核軍拡をみれば説得力は乏しく、むしろ強い疑念を抱かせる。

米国は10月の国家安全保障戦略に「核兵器の役割低下」の文言を入れたが、現実との遊離が気になる。核抑止力の充実はもちろん、ロシアに加え中国を軍備管理交渉の枠組みに引き込み、偶発的核戦争のリスク低減も図るべきだ。

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