決勝トーナメント1回戦でスペイン代表を退けたモロッコ代表の躍進に沸くワールドカップ(W杯)カタール大会だが、サッカー史に大きな影響を与えた元モロッコ代表の選手がいるのをご存じだろうか。名前はアブデルマジド・ウルメルス。この時点でピンときたら、かなりのサッカー通だろう。
ウルメルスを有名にしたのは、プレーではない。2004年11月に行われたブルキナファソとの国際親善試合で負った全治8カ月の大けがが、ウルメルスの名前を後世に語り継がれるものにした。
当時、ウルメルスが所属していたベルギー1部リーグのシャルルロワは、モロッコ代表チームでの活動中の大けがによって、中心選手だったウルメルスが自チームでプレーできなくなり、リーグ優勝を逃すなど多大な損失を被ったとして、損害賠償を請求。当時の欧州ビッグクラブの非公式の連合体「G14」がシャルルロワ支援に乗り出し、国際サッカー連盟(FIFA)を訴える事態に発展した。G14は自らが多額の移籍金を支払って獲得した選手をFIFAが「代表活動」の名前のもとに、気ままに招集すること自体に反発を強めていた。