昭和51年に閣議決定された「防衛計画の大綱」で掲げた「基盤的防衛力構想」は30年以上生き永らえた。冷戦が崩壊したにもかかわらず、そこから20年、民主党政権の平成22年まで生き残った。あまりにも長い間、基盤的防衛力構想に安住してきた結果、そこから離れることに抵抗感や恐れがあったのではないか。
基盤的防衛力構想は外部の安全保障環境と直接関係なく一定の防衛力が必要だという発想だ。思考停止ともいえる。本来は日本の置かれた現実を直視し、どう国を守っていくかを考えなければいけない。防衛省の根本的な任務について思考停止に陥らせたのが基盤的防衛力構想ではないか。
大綱には(基幹部隊や装備の数量を示す)「別表」が付いている。別表に記載された戦闘機や護衛艦の数字を確保することが優先課題だという思考になってしまった。安全保障環境が急速かつ大きく変わっている中で、国の守り方、装備、技術も変化しているはずなのに、船や飛行機の性能や戦い方に関係なく機数、隻数だけが記載されてきた。