缶入り日本酒、販売好調 来年には米国へ輸出本格化 神奈川のスタートアップ

シンガポールのスーパーでずらりと並ぶ「ICHI―GO―CAN」シリーズ(Agnavi提供)
シンガポールのスーパーでずらりと並ぶ「ICHI―GO―CAN」シリーズ(Agnavi提供)

若者らにも日本酒を気軽に飲んでもらおうと神奈川県内のスタートアップ(新興企業)が手掛ける1合缶(180ミリリットル)入りのシリーズの販売が好調だ。生産設備も増強しており、来年は輸出向けの新ブランドも立ち上げて北米を中心に市場開拓を本格化させる。日本酒の海外進出をてこに酒米の消費を拡大させ、各地の歴史ある酒蔵の安定的な存続につなげることまでを見据える計画が現実味を帯び始めている。(高木克聡)

1合缶入りのシリーズを手がけるのは茅ケ崎市の「Agnavi(アグナビ)」。全国の酒蔵から専用のタンクで日本酒を輸送し、1合缶に充塡(じゅうてん)する。流通の効率を高めることで収益を上げるビジネスモデルだ。缶に着目したのも、ビンに比べて輸送の際の積載効率が2倍で、破損するリスクもないからだ。海外への輸出もしやすく、空き缶は他の飲料と同じルートでリサイクルに回せる。

昨年3月に販売を開始し、缶のデザイン性を工夫したり、鉄道会社などとコラボレーションして販売したりすることで、これまで日本酒を敬遠していた若者にも手に取ってもらえる機会が増えたといい、アグナビの玄成秀社長は「想定を上回る販売ペース」と自信を深めている。

今年11月上旬にはシンガポールの高級スーパー2店舗で、矢尾本店(埼玉県秩父市)の「秩父錦」、富士錦酒造(静岡県富士宮市)の「富士錦」など「ICHI―GO―CAN(一合缶)」シリーズの地酒10種類の販売を開始。円安も追い風に11月下旬に香港にも店舗販売の形で進出した。

今年の生産量は15万本を超えた。アグナビは国内外の旺盛な需要に対応するため来年以降の生産増強を見据え、レンタルしていた日本酒の充塡機を数千万円を投じて購入に踏み切った。「これで最大で年2百万~3百万本まで生産できる」(玄社長)という。

来年には価格を抑えた大量生産のセカンドブランド「Canpai(カンパイ)」で北米市場に打って出る。同年の出荷目標は100万本だ。将来的には年1億本にまで拡大することを目指しており、約7割が海外市場向けになるという。同社は、この目標を達成すれば国内の酒米の消費量が現状よりも5%上昇するとしている。

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