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スーパーのおはぎに行列 なぜ? 宮城の奥座敷・秋保温泉に「奇跡の味」

店の前にはおはぎ目当ての客で行列ができる=仙台市(菊池昭光撮影)
店の前にはおはぎ目当ての客で行列ができる=仙台市(菊池昭光撮影)

「宮城県の奥座敷」といわれる秋保(あきう)温泉。老舗の温泉宿が立ち並ぶ山間の街に、毎日、行列ができる摩訶(まか)不思議なスーパーマーケットがある。外観も品ぞろえも、どこにでもある「普通のスーパー」なのに、平日でも開店時には客が長い列を作る。何が人をひきつけるのか。店内に入ると、中心の陳列棚を独り占めにする「おはぎ」がズラリ。過去最高で1日の売り上げ2万4千個という〝奇跡のスイーツ〟なのだ。

仙台駅周辺から車で約30分。コンビニエンスストアを一回り大きくしたほどの、小さめの店舗なのに、第4駐車場まで完備され、青森、土浦、庄内など他県ナンバーの車が並ぶ。晩秋を迎えた山間の冷え冷えとした空気のなか、午前9時に「主婦の店 さいち」(仙台市太白区秋保町湯元薬師)の扉が開いた。平日にもかかわらず、すでに50人ほどの客が並んでいる。開店と同時に、どっと店になだれ込んだ客は他の商品には目もくれず、慣れた手つきで籠を取ると、店中央の陳列棚に一気に突き進んだ。

「主婦の店 さいち」のおはぎ。甘さ控えめが人気の秘密のようだ=仙台市(菊池昭光撮影)
「主婦の店 さいち」のおはぎ。甘さ控えめが人気の秘密のようだ=仙台市(菊池昭光撮影)

そこにあったのは、何段にも重ねられたおはぎの山、山、山…。客は籠に次々に大量のおはぎをほうり込むと、レジにダッシュ。少しホッとした表情で会計を済ませていく。おはぎは店の奥から次々と補充されるが、まさに〝飛ぶように〟売れていく。定番のアンコのほか、きなこやゴマ、季節限定の納豆といった変わり種も売っている。値段はいずれも、税込みで2個入りパック250円、3個入りパックで375円と、財布に優しいお値打ち品だ。

米や酒を生業にしていた創業140年の老舗が、現在のようなスーパーの業態になったのは半世紀前。おはぎは当初なかったが、お彼岸やお盆に近所の住民から頼まれて作ったのが始まりで、口コミで広がっていった。平日は1日4千~6千個、今は旅行割の影響なのか1日8千個は売れる。お彼岸には2万4千個を売ったことも。店の総売り上げのうち、おはぎが35%を占めるというから、ありがたい稼ぎ頭といえる。

「さいち」の佐藤浩一郎社長(48)によると、両親は最初、2年で止めようと思ったが、客足が止まらないので続けたという。

これだけ爆発的に売れる秘密は何なのか。

北海道産のあずきと、宮城産のもち米の王様といわれる「みやこがね」とササニシキのブレンド。味付けは無添加のうえ、砂糖と塩だけで素材の本来の味を引き出す。「甘さ控えめ」は40年前から1度も〝味変〟したことはない。店の裏側にある工場では、女性のパートさんがせっせとおはぎを作っているが、すべては個々の〝ワザ〟に委ねられ、レシピはない。それでも一定の水準は守られているから驚きだ。

味を失わないため、消費期限は当日のみ。冷凍の宅配はないので、現地に行かないと味わうことは不可能。ただ、今はJR仙台駅に唯一の販売区画を設けており、やや間口は広がっている。この店も300~400パックがわずか30分で売り切れる。

父の啓二さん(87)と、母の澄子さん(令和2年死去)が二人三脚で続けてきた店は、秋保温泉に観光客を引き込んでいる。(菊池昭光)

アクセス】 「主婦の店 さいち」(秋保温泉) JR仙台駅から仙山線で愛子(あやし)駅下車(約30分)-バス(約15分)。JR仙台駅からバス(宮城交通秋保線、約50分)(宮城交通快速秋保線、約30分=土日祝のみ)。東北自動車道仙台南ICから車で国道286号と県道62号(約15分)。営業時間は午前9時~午後7時。休業は第2、第4水曜(8月は第4水曜、12月は第2水曜、祝日の場合は営業)。

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