<独自>防衛費財源、税外収入基金化へ法整備へ 来年度は増税せず

外交安全保障に関する与党協議会に臨む自民党の麻生太郎副総裁(中央右)、公明党の北側一雄副代表(同左)ら=7日午後、国会内(矢島康弘撮影)
外交安全保障に関する与党協議会に臨む自民党の麻生太郎副総裁(中央右)、公明党の北側一雄副代表(同左)ら=7日午後、国会内(矢島康弘撮影)

自民、公明両党幹部は7日、政府が今月中旬に予定する国家安全保障戦略など「安保3文書」の改定に関する協議会を開き、防衛力の抜本的な強化に向けた防衛費増額の財源について、歳出改革や決算剰余金などを活用した上で、不足分は増税で対応する方針を確認した。来年度は増税を行わないことも申し合わせた。一方、政府が財源の一つとして税外収入による基金設立に向けた法整備を行う方向で検討に入ったことが同日、分かった。

協議会では来年度以降5年間の防衛力整備の総経費を約43兆円とする政府の方針を了承。増税が必要な防衛費の不足分に関し、8日の政府与党会合で政府の方針を聞いた上で、両党の税制調査会で議論を進める。関係者は、5年間の最終年度となる令和9年度に必要な増税分は約1兆円になるとの見通しを示した。

自民の萩生田光一政調会長は協議会後、記者団に「国民に直接負担をかけない形でできる限り財源を確保する。それでも足らざる部分があるならば税も考えていかなくてはいけない」と説明した。公明の高木陽介政調会長は「物価高で個人や中小企業にしわ寄せが行かないようにする、といった議論が税調で深まってくるだろう」と語った。

一方、政府は協議会の場で、防衛費の財源として「防衛力強化資金(仮称)」を設ける方針を示した。複数の政府関係者によると、国立病院機構などに国庫返納させる積立金(利益剰余金)や国有資産の売却益など税外収入を基金化し、複数年度にわたり防衛力強化の財源とする。基金化には法的根拠が必要で、来年の通常国会にも関連法案を提出する。

協議会に先立ち、両党は3文書改定に向けた実務者ワーキングチーム(WT)会合を開き、政府は3文書の骨子案を提示した。

必要最小限度の自衛の措置として敵拠点などへの攻撃力を持つ「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記したほか、サイバー分野で相手の攻撃兆候を探知する「能動的サイバー防御」を構築し、情報収集体制を強化するなどの内容が盛り込まれたとみられる。

ただ、防衛力強化の根拠となる情勢認識で、中国の覇権主義的な動きについて安全保障体制への「挑戦」と位置付けたことや、日本の排他的経済水域へのミサイル発射を「脅威」と記す案について異論が出た。公明が外交の観点から穏当な表現を求めたが、自民は厳しい書きぶりが必要と訴え、議論を継続することとなった。海上保安庁の強化に関する表記も両党で争点となった。

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