『日本統治時代 ある校長の樺太・台湾旅日記』(梓(あずさ)書院)という本が8月に出版された。昭和初期、尋常小学校の校長だった上野季雄(すえお)(1890~1971年)が日本統治下の南樺太と台湾を訪問した見聞録を再構成したもので、当時の外地の様子や旅行事情がうかがえて興味深い。
上野の樺太行は、昭和6(1931)年8月、居住地の九州・福岡県から鉄道と船を乗り継いで南樺太へ渡り、島をほぼ一周する24日間の大旅行であった。
主たる目的は、ジャーナリストで思想家の徳富蘇峰(とくとみ・そほう)(1863~1957年)が主宰する国民新聞によって大正期に設立された財団法人「国民教育奨励会」主催の『樺太夏期大学』への参加である。