米共和党、トランプ氏の〝存在〟薄め勝利目指す

2日、米ジョージア州で開催したイベントで演説する共和党のウォーカー氏(ロイター=共同)
2日、米ジョージア州で開催したイベントで演説する共和党のウォーカー氏(ロイター=共同)

南部ジョージア州の上院決選投票は、定数100の上院の1議席とはいえ、民主党が予想以上に善戦した中間選挙の最終決戦であり、全米がその勝敗を注視する。現場では、トランプ前大統領の存在感の後退が浮き彫りとなっていた。

「人格と適性の選択だ」

米公民権運動の指導者、キング牧師ゆかりのアトランタの教会で、牧師を続ける民主党現職、ウォーノック氏は5日、共和党候補のウォーカー氏との対決をこう訴えた。

ウォーカー氏の適格性に繰り返し疑問を投げかけるのは、選挙戦で人工妊娠中絶反対を唱えながら、妊娠した交際女性に小切手を手渡し中絶を促した醜聞に加え、最近ではジョージア州でなく、テキサス州の持ち家を自宅と税申告していたことが発覚したからだ。

ジョージア大からプロフットボールNFLに進んだウォーカー氏。抜群の知名度によって無党派層へ支持を広げる、というのが、擁立に動いたトランプ氏の当初のもくろみだった。

だが、中間選挙の同州の出口調査(CNN)で、全体の24%を占める無党派層の53%をウォーノック氏が獲得、ウォーカー氏は42%と水を開けられた。2020年の大統領選に不正があったと主張し、21年1月の米議会襲撃事件の責任も追及されるトランプ氏からの有権者の離反が影響した。

4、5両日、地方をバスで回るウォーカー氏の集会を訪ねると、本人も応援の共和議員も、「トランプ」の一言を発しなかった。

トランプ氏の存在を薄めるかのような状況の中、ウォーカー氏を支えるのが、ジョージア州で再選を果たしたばかりのケンプ知事(共和党)だ。ウォーカー氏はここ最近、20年大統領選の「不正投票」主張をめぐりトランプ氏と反目するケンプ氏の応援映像をツイートし、〝近さ〟を演出。トランプ氏の求心力低下とともに、共和党内で穏健派が主導権を握ろうとする側面も示唆された。

民主党は下院の多数派を小差で共和党に奪われており、上院ではウォーノック氏の再選で共和党と同数の50議席から51議席にしたい考え。

51議席にすれば、現在両党で均等に分け合う委員会の委員数を民主党の多数にできるためで、連邦最高裁判事に空席ができバイデン大統領がリベラル派判事を指名する場合など、重要な人事案件や法案で共和党の妨害を受けずに承認が得られやすくなる。(アトランタ 渡辺浩生)

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