ソウルからヨボセヨ

夢を語る一杯

学生時代の語学研修を含めると、韓国との付き合いは四半世紀を超えるが、いまだに慣れないのが韓国の酒文化だ。安価な希釈式の焼酎や、ビールに焼酎を混ぜた「爆弾酒」を何度も乾杯しながら飲み干す。杯を空けた者同士、一体感は増すものの、味より酔う方に比重が置かれ、悪酔いすることもしばしば。

そんな中、コメと麹でつくる濁り酒のマッコリなど、各地に本来あった伝統酒づくりに挑戦し、酔うためから味わう酒文化への転換を目指す20~30代の若者を先日、取材した。

医師や弁護士、テレビプロデューサーといった社会的に安定したイメージの職業に就いた若者があえて伝統酒づくりにチャレンジしていたのも新鮮な驚きだった。醸造を学ぶ夜間講座の後、手作りしたマッコリを持ち寄り、いかにうまい酒をつくるか熱く語り合う受講生たちにも会った。

地方ごとに特色ある清酒や焼酎がある日本の酒に影響を受け、自国の酒を顧みるきっかけになったと話す若者も少なくなかった。

就職や結婚、出産が難しいなどと若者を取り巻く話題は暗いものが多い中、手探りの挑戦を続ける彼らを見ていると、未来への希望が感じられ、明るい気持ちになった。彼らがつくる渾身(こんしん)の一杯は愚痴ではなく、夢を語りながら飲むのに合いそうだ。(桜井紀雄)

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