「苦悩あったろう」 黒子役の遠藤航、恩師らねぎらう

クロアチア戦の前半、攻め込む遠藤航=アルジャヌーブ競技場(撮影・蔵賢斗)
クロアチア戦の前半、攻め込む遠藤航=アルジャヌーブ競技場(撮影・蔵賢斗)

サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で、ベスト16で涙をのんだ日本代表。中盤を支えた遠藤航(29)は全4試合に出場し、強豪相手にも球際の強さを存分に発揮した。度重なる負傷を乗り越え、新たな歴史に名を刻んだサムライブルーの〝黒子役〟を、恩師らがねぎらった。(末崎慎太郎)

日本時間6日未明。PK戦の末にクロアチアに敗れた遠藤は、両手を腰に当てたまま天を仰いだが、すぐに前を向いた。

「ここで終わるわけじゃない。次に向けてやっていかないといけない。新しいチャレンジが始まる」

森保ジャパン不動のボランチは、幼い頃から黒子役が染みついていた。

生まれ育った横浜市のサッカースクールで教えた寺尾厚志さん(47)の印象は「黙々と練習に取り組む子」。口数は少ないが、目標ややるべきことを理解し、言葉にできた。試合形式の練習では、堅実なプレーで周りの選手を生かす姿が印象に残っているという。

プロへの転機となった湘南ユース時代。高校1年で加入した当初、周りはサッカーエリートだらけ。指導した平塚次郎さん(43)によると、体格もきゃしゃだった遠藤は、試合に出ても「相手に抜かれるシーンもよくあった」。

それでも可能性を感じさせたのが、素直で謙虚な人柄と、自分で目標を設定し、努力を積み上げるクレバーさだった。

乾いたスポンジのように技術を吸収し、周囲との差が埋まると、高校2年でU16(16歳以下)日本代表に選出。国体では神奈川県少年選抜の主将として、全国優勝を成し遂げた。高校3年時にはJリーグの舞台に立つまでに飛躍した。

「言葉や態度には出さないが、常に高い向上心を持ち、周りのレベルを底上げしてくれるような存在だった」。ユース時代に切磋琢磨(せっさたくま)した琉球の岡崎亮平(30)は、盟友の能力をこう評価する。

プロとして順調に歩みを進める遠藤に、W杯の舞台は甘くなかった。前回ロシア大会は代表に選ばれながら、チャンスを与えられず。決勝トーナメント1回戦で、ベルギーに2点先取するも逆転負けを喫した〝ロストフの悲劇〟を、指をくわえてみていた。

中心選手として迎えた今大会は、直前の試合で頭部を強打し、一時出場が危ぶまれた。驚異的な回復力でドイツ戦の逆転劇を陰で支えたが、次のコスタリカ戦では、ひざを負傷。途中出場のスペイン戦、先発復帰したクロアチア戦では、世界屈指の中盤と互角に渡り合ったものの、ベスト8の壁を破れなかった。

日本代表では、次のリーダーとしての期待がかかる。寺尾さんは「度重なるけがもあり、人知れぬ苦悩もあったと思う」とねぎらい、「彼には相手に向かう闘志だけでなく、自分を見つめる精神力がある。次の大会ではキャプテンとして日本代表を牽引(けんいん)する存在になってくれるだろう」とさらなる活躍を願った。

会員限定記事会員サービス詳細