日本漢字能力検定協会(京都市)は、令和4年の世相を1字で表す「今年の漢字」の応募を12月5日まで受け付けている。サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会のグループリーグで強豪国のドイツとスペインに劇的な逆転勝利を収めた日本代表は、日本時間6日午前0時から決勝トーナメントのクロアチア戦に臨む。ロシアによるウクライナ侵攻など暗い出来事が相次いだ令和4年。多くの国民に希望を与える日本代表の活躍が「今年の漢字」を明るくする〝逆転劇〟を起こす可能性もある。
キックオフ直前まで応募受け付け
「今年の漢字」は、漢字の素晴らしさや奥深い意義を伝えるため、日本漢字能力検定協会が主催。毎年11~12月に募集し、最も多かった字を京都・清水寺の森清範貫主の揮毫(きごう)で発表するのが恒例となっている。
令和4年の募集は5日までで、特設サイトの受け付け終了時刻は午後11時59分。偶然にも、日本代表が目標に掲げる「ベスト8以上」が懸かったクロアチア戦が始まる6日午前0時のまさに直前のタイミングだ。結果は12日に清水寺で発表される。
「今年の漢字」がスタートした平成7(1995)年は阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などが発生した激動の年で、「震」が選ばれた。
令和3(2021)年は「金」。新型コロナウイルス再拡大が危ぶまれるなか、1年の延期を経て開催された東京五輪・パラリンピックで日本人選手が多数の金メダルを獲得したことが主な理由だった。
初出場を決めた年は「倒」
サッカーW杯にちなんだ漢字が選ばれた年も多い。
日本代表がW杯初出場を決めた平成9(1997)年は「倒」が選ばれた。その理由には、金融機関や大手企業が倒産するなど「これまでの神話や社会のシステムなどが次々と倒れたこと」のほか、「並いる強豪を倒した」日本代表の活躍が挙げられた。
日韓大会が開かれ、初のベスト16入りを果たした平成14(2002)年は「帰」だった。日本経済がバブル以前の水準に回復したこと、北朝鮮拉致被害者が帰国したことに加え、「ワールドカップのテレビ観戦と不景気で早く帰宅する人が多くなった」との声もあった。
2014ブラジル大会出場を決めた平成25(2013)年は「輪」。日本代表のチームワークや、新ユニホームで円陣を組むと背面の線が「輪」のデザインになることなどが理由に挙がった。
「悲劇を歓喜に」プレーで実現
今回のカタール大会で日本代表はグループリーグでドイツ、コスタリカ、スペインと同組になり、厳しい戦いが予想されていた。実際にそうなったが、ドイツとスペインにはそれぞれ逆転勝利。決勝トーナメントに進出する劇的な展開となった。
特にスペイン戦でゴールラインぎりぎりからボールを折り返し、決勝点をアシストしたMF三笘薫選手の「1ミリの奇跡」は海外メディアでも大きく取り上げられた。
令和4年はコロナ禍が収束しないうえに、ロシアによるウクライナ侵攻、安倍晋三元首相銃撃事件、北朝鮮のミサイル発射など暗い出来事が相次いだ。年の瀬が迫る中、「ドーハの悲劇をドーハの歓喜に」と燃える思いをプレーで実現した日本代表の勇姿は、日本中に大きな感動を与えている。
ちなみに「ミリ」の漢字表記は「粍」。日本代表がもたらした感動を「今年の漢字」に表すチャンスを「一粍」でも逃す手はなさそうだ。(宇野貴文)