アディショナルタイム

「サッカーを戦争だと言う者は、本当の戦争を知らない」…英雄の教え息づくクロアチア

1998年W杯フランス大会に出場した クロアチアのボバン(右)とシュケル(左)。戦火を乗り越えたチームを3位に導いた
1998年W杯フランス大会に出場した クロアチアのボバン(右)とシュケル(左)。戦火を乗り越えたチームを3位に導いた

「サッカーを戦争だと言う者は、本当の戦争を知らない」-。そう話したのは「クロアチアの英雄」とたたえられるズボニミール・ボバンである。卓越した戦略眼を武器に、イタリアの名門、ACミランで活躍した名選手だ。

セルビアとクロアチアの対立が激化していた1990年の試合で暴動が発生。当時は地元のディナモ・ザグレブに所属していたボバンは警官隊と乱闘して9カ月の出場停止処分を受け、同年のワールドカップ(W杯)イタリア大会に参加できなかった。しかし、独立を果たしたクロアチアが戦火を乗り越えて初出場した98年フランス大会でチームを牽引(けんいん)し、3位に押し上げたことで知られる。

2006年のドイツ大会直前。日本とクロアチアが再び1次リーグで同組となったことを受け、クロアチアの首都ザグレブを訪れた。ボバンやフランス大会得点王のダボル・シュケルといった「98年世代」との単独インタビューを画策したが成功せず、たどりついたのはボバンの兄、ドラゼンさんがザグレブ市内で経営するイタリア料理店。ドラゼンさんは「98年大会ほど弟を誇りに思ったことはない。彼は歴史を作った。戦争の記憶もまだ生々しく残っていたが、すべてのクロアチア人に勇気を与えたんだ」と胸を張っていた。

クロアチアとはそんな歴史を持つチームである。同国リーグでプレーし、クロアチア選手のJリーグ移籍を手掛けていた日本人は、クロアチアのサッカーの特徴を「とにかく(ボディー)コンタクトが強い。ぶつかるときに恐れないし、激しい。血を流してでもヘディングする。子供のころから、コンタクトで逃げる選手は信頼されない。勝負どころで逃げる選手はダメだと教えられる」と解説。「時間の使い方も子供のころから教え込まれ、0-0の後半や接戦になったときの精神的な強さはすごい」とも話していた。

かつて「東欧のブラジル」と言われた旧ユーゴスラビアの流れをくむ足元のテクニックに加え、国民性とも言える勝負強さやしたたかさは、PK戦や延長戦をしぶとく勝ち上がり、準優勝した前回2018年のロシア大会でも存分に発揮されていた。

日本は日本時間6日午前0時からの決勝トーナメント1回戦で、クロアチアと対戦する。W杯の舞台では3度目の顔合わせ。難敵の向こうに、新しい景色が広がっている。(編集委員 北川信行)

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