西九州新幹線が9月23日、武雄温泉(佐賀県武雄市)―長崎で開業した。新幹線としては全国で最も短い66キロで、既存の九州新幹線にはつながっていない。整備方式が決まらず、福岡へ向かう佐賀県内の一部区間の着工見通しが立っていない状況で、武雄温泉駅で新幹線と福岡方面からやってくる在来線特急「リレーかもめ」を同一ホームで乗り換える必要がある。乗り換えを含めた所要時間は博多―長崎の所要時間は最速で1時間20分、新大阪―長崎が3時間59分となり、ともに30分短くなる。
鉄道開業150年の記念すべき年に生まれた新幹線で、関西から長崎への移動が便利なった。開業100周年だった昭和47年9月の時刻表を開き、所要時間などを比較してみよう。
新大阪から長崎への最終列車を見ると、現在は新大阪を19時23分発の「のぞみ51号」に乗り、博多(福岡市)で「リレーかもめ65号」、武雄温泉で「かもめ65号」に乗り継げば、23時39分に長崎に着く。
50年前はどうだろう。まず、山陽新幹線は岡山止まり。「のぞみ」が誕生前で最速列車は「ひかり」。在来線の長崎線は電化されておらず、急行が中心のダイヤだ。新幹線と連絡する岡山発の在来線特急の「つばめ」「はと」の下関(山口県下関市)などでの接続が悪く、新大阪は9時台に出なければならない。長崎着は20時台になる。
関西から長崎へ直通する昼行特急は「かもめ」だけ。京都を7時30分に出発し、長崎は19時12分。佐世保(長崎県佐世保市)行きの編成と合わせ、食堂車も含めたキハ82系気動車の堂々の13両編成だ。
この時代はまだ夜行列車の需要が大きかったようで、長崎への寝台特急は新大阪発の「あかつき」が2本、東京発の「さくら」「はやぶさ」の計4本走っている。「あかつき1号」の新大阪発は18時28分(長崎着は7時18分)。現在は19時23分発の「のぞみ」に乗れば、その日のうちに長崎に行ける。この50年のスピードアップは隔世の感を禁じ得ない。
長崎県の資料によると、長崎と福岡を結ぶ長崎ルートが全線フル規格で整備された場合、長崎-新大阪の直通運行の所要時間は約3時間15分という。今回、新駅ができた嬉野温泉(佐賀県嬉野市)の旅館関係者は「関西とつながってこそ大きな効果がある」と話す。
長崎ルートは在来線と新幹線の両方を走行できるフリーゲージトレインを導入する計画だったが、開発が頓挫。国は全線をフル規格とする方針を示したが、佐賀県が財政負担などから反対しており、今後が注目される。(鮫島敬三)