「蕪主(かぶぬし)総会を開きます。来てみませんか」。長野県野沢温泉村の観光協会から、こんな案内が届いた。企業の株主総会なら聞いたことはあるが、蕪主総会とは何? 聞くと同地の名物「野沢菜」を愛する全国のファンの集いをそう名付け、会員である〝蕪主〟になると野沢菜漬けなどが配当として受け取れる企画だという。さらに問い合わせると「野沢菜と大阪とは深いつながりがあります」との話も。一体どんな関係が…。これは調べてみるしかないと現地に飛んだ。
11月中旬、JR大阪駅から特急「サンダーバード」と北陸新幹線を乗り継ぎ、野沢温泉村に到着した。
広大なブナ原生林に抱かれた同村は、古くからの湯治場として知られる。日本有数の豪雪地帯でもあり、冬場の保存食として生活を支えてきたのが野沢菜漬けだ。地元では敬いの気持ちを込めて「お葉漬け」と呼ぶ。程よい塩加減でシャキッとした歯触りが小気味いい。
今回の蕪主総会には、全国の野沢菜好き約150人が集まった。
「もともとこの地は雪国なので冬は青物がない。発酵食品で一冬おいても悪くならないし、昔は自家製でまかなうのが普通でした。その野沢菜が全国に広まったのは、昭和40年代のスキーブームなんです」