主張

ウイグル人権決議 参院は今国会中に採択を

参議院は「良識の府」といわれるが、良識以前に、常識を疑う。

中国政府による新疆ウイグル自治区や南モンゴルなどへの人権侵害を非難する参院決議が、今国会で採択できていない。先の通常国会でも採択を目指したが成案をまとめられず、うやむやのまま現在に至っている。

恥ずべき事態である。

国会決議は、国の意思を内外に示すものだ。明確なメッセージを伝えられる決議を、今国会中に必ず採択すべきだ。

参院で与野党が検討中の決議案は「国際社会から新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている」と指摘している。

今年2月採択の衆院決議と同様、「中国」の文言はなく、「人権侵害」や「非難」も明記していない。誰に何を言っているのか不明で、中国にも響くまい。

国会が寄り添うべきは弾圧に苦しむ人々なのか、それとも弾圧する中国への忖度(そんたく)を優先するのか、普通に考えれば分かりそうなものではないか。

そんな不完全な決議案さえ通らないのは、なぜか。

採択は一時、2日に予定されたが実現しなかった。衆院決議にあった「深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきだ」という趣旨の文章が参院決議案にないことに一部野党が反発したためだ。

国連人権高等弁務官事務所が8月、「新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害が発生している」と指摘する報告書を中国での調査に基づいてまとめたことを受けて、自民、公明両党が考慮し、決議案に盛り込まなかったのだという。

国連が調べたのだから日本政府が情報収集しなくてもいいというなら、あきれる。参院決議にも入れるべきだ。

多くの西側諸国の政府や議会がウイグル問題について、「ジェノサイド(集団殺害)」や「人道に対する罪」を非難している。日本の衆参両院議会の弱腰ぶりは突出している。

国内でも中国の人権侵害の究明を目的とした新たな超党派の議員連盟が発足予定という。中国の人権侵害を許さぬ姿勢を明確に示せるよう、国会の取り組みを強力に牽引(けんいん)してほしい。

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