京都「正論」懇話会の第68回講演会が5日、京都市のハイアットリージェンシー京都で開かれ、前統合幕僚長の河野克俊氏が「日本の安全保障と課題 今、取るべき対中・対北戦略とは」と題して講演した。河野氏は「ロシアのウクライナ軍事侵攻によって日本の安全保障政策はより重要性を増している」と述べ、従来の防衛策は転換点を迎えているとの認識を示した。
今回の侵攻後に度々、核兵器の使用を示唆するロシアのプーチン大統領に対し、侵攻開始直後から米国のバイデン大統領は「軍事介入しない」と明言していた。こうした米国の姿勢に「核戦争におびえて動かない米国を世界は初めて見た」と指摘。日本は米国の「核の傘」に入っているとされるが、有事の際に日米同盟が機能するかを含めて政治的な議論の必要性を強調した。
一方、日本周辺では、中国の軍事力拡大に伴い、台湾有事が懸念されているほか、北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返している。こうした状況で、ウクライナを巡る米国の対応が「アジアからの米国の影響力排除を最終目的にする中国などに与える影響は大きい」と説明。日本は、米国の核兵器を自国の領土・領海内に配備して共同運用する核共有などについても、タブー視せずに議論すべきだとした。