北朝鮮による弾道ミサイル発射に加え、台湾有事の懸念が強まっている。だが警報が発令されても、避難できる地下施設はほとんど整備されていない。地続きに国外へ逃げることもできない。有事に住民がどう避難するかが問われる中、震災やミサイル発射といった非常時のたびに注目される『民間防衛』(スイス政府編著、原書房・1650円)が、今年も増刷された。
本書は核戦争の危機もあった冷戦時代、スイス政府が住民と国土を戦争・災害から守るためのマニュアルとして各家庭に配ったもの。冒頭で、民間の力と軍事力を一つにする重要性や祖国の価値を説いている。具体的には、食料輸入が止まる事態に備え、主食のほか1人当たり砂糖2キロ、食用油1リットルなどの備蓄を求めている。核兵器や生物・化学兵器への対処法もある。
女性と徴兵義務のない男性で構成する民間防災組織の役割も詳述。緊急時の情報伝達・避難・消火・救助・応急手当ての手順を示し、これらを知っていれば冷静に行動できると強調する。