「次のFTX」に疑心暗鬼 マネー収縮で露見する無謀な金融取引

暗号資産(仮想通貨)交換大手FTXトレーディング(本社・バハマ)の経営破綻から、間もなく1カ月。裏付け資産のない電子通貨を使った錬金術まがいのビジネスや顧客の預かり資産の流用が明るみに出たが、全貌は見えないままだ。主要中央銀行による金融引き締め局面で、過剰なリスクを取った無謀な金融取引で行き詰まる例は後を絶たず、金融市場は「次のFTX」に警戒を強めている。

「多くの過ちを犯した」-。FTXの創業者で前最高経営責任者(CEO)のサム・バンクマンフリード氏は11月末、オンラインイベントに登場し謝罪した。

FTXの危機が表ざたになったのは、11月2日。バンクマンフリード氏が所有する投資会社アラメダ・リサーチの資産の大部分が、FTXが発行する独自の電子通貨「FTT」であることが報じられた。

その後、競合の仮想通貨大手バイナンスが、保有するFTTを売却すると公表するとFTT価格は急落。FTXの財務不安が高まり、投資家が一斉にFTXから資金を引き出す取り付け騒ぎが起きた。

同11日、FTXとグループ会社約130社は連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請。負債総額は最大500億ドル(約7兆円)、債権者は100万人超とされる。FTXは破綻後にハッキングされ多くの資産が流出したほか、上層部の使い込みなども発覚している。

騒動の直接的な要因は、FTXとアラメダのずさんな経営だ。FTXはアラメダに対し、裏付けのないFTTを供給していたほか、FTTを担保に顧客から集めた資金を融資しビジネスを拡大してきた。ソフトバンクグループなど機関投資家の出資も受けていた。

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手らトップアスリートを宣伝に起用したことで知名度は急上昇。しかもバンクマンフリード氏は米中間選挙で民主党に多額の献金をするなど、ロビー活動にも熱心だった。

米国やバハマの当局が実態解明に動いているが、どこまで把握できるかは疑問視されている。

FTXが錬金術のようなことができていた背景には、新型コロナウイルス禍の景気下支えで膨れた金融緩和マネーがあった。投資家がリスクを取りやすくなり、一部が仮想通貨へと向かった。

しかし、今年に入って米連邦準備制度理事会(FRB)など主要中銀がインフレ抑制のため大幅利上げに動き出すと、仮想通貨は価値が下落し様相は変わる。

FTX以外にも、過剰なリスクを取った金融取引は次々と露見している。欧州金融大手クレディ・スイスの多額の損失計上や英年金基金によるデリバティブ(金融派生商品)の運用の失敗などだ。

エコノミストの豊島逸夫氏は「マネー収縮時代を告げる現象が立て続けに起きた。この類いの話はこの先も起こりやすい」と指摘する。特に通常の銀行融資を受けられない相手に高金利で融資する「シャドーバンキング(影の銀行)」や、企業の幹部が帳簿外で個人的に資金を融通し合う取引など、当局の目が届きにくいところに潜んだリスクに注意が必要だと訴える。

(米沢文)

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