山本一力の人生相談

孫が父親を呼び捨てにする

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

70代女性。6歳の孫のことで悩んでいます。言葉をしゃべり始めたころから、私の息子である父親を名前で、しかも呼び捨てにするのです。嫁のことは「ママ」と呼ぶのに。

息子と嫁に何度か注意したのですが、聞く耳を持ちません。私の主人は息子や孫に嫌われたくないのか、何も言いません。わが家に来るたびに息子を呼び捨てにする孫にストレスを感じます。嫁は息子より8歳年上で、どうやら嫁自身が自らの父親を呼び捨てにしているようなのです。

古い考え方かもしれませんが、父親を呼び捨てにするなんてあり得ません。直接孫に注意しようとも思うのですが、どのように話せばいいのか思案しています。変に注意して、嫁姑(しゅうとめ)の間がこじれるのも心配です。良きアドバイスをお願いします。

回答

まずは暫時、耳を貸していただきたい。まだ数十日も先の話だが、初春元日を祝う雑煮についてだ。

百家族が集えば百種の雑煮が存在する。ダシは昆布か削り節かに始まり、醬油(しょうゆ)は、具はと進んだあと、主役の餅登場となる。

大別すれば切り餅か丸餅かだ。さらにはあんこ餅なども加わり、お国自慢・家自慢談議へとつながる。

わが郷里高知は、四国で唯一の切り餅だ。由来を聞いて得心できた。

関ケ原合戦の論功行賞で、土佐には掛川藩藩主だった山内一豊公が、四倍加増のうえ移封されてきた。

切り餅は掛川の雑煮文化。来年で江戸開府から四百二十年だが、高知の雑煮は掛川の習わしが息づいている。

「嫁姑の間がこじれるのも心配です」のあと、「良きアドバイスをお願いします」と、結んでおいでだ。ならば申し上げたい。

あなたの息子一家のいとなみには、しつけを含めて、脇から口出しは無用だと。

孫が父親をどう呼ぼうとも、別家庭のしつけ・いとなみだと受容なさればいい。呼び捨てに我慢できぬなら、父と子、さらには母も加わり、当事者家族で話し合う主題だろう。

「あんこ餅が雑煮の常識」という家もある。「父を呼び捨てにするなんて」と、あなたの常識では不快かもしれぬ。が、それは「丸餅ではなく切り餅よ」と、決めているに等しい考えかもしれない。

日進月歩のウェブネット進化で、社会は饒舌(じょうぜつ)の極みにある。

「ここから先は黙すべし」の敷居が、日を追って低くなっている昨今。

お互い、古希を過ぎた身だ。黙する効能をおのれに課せるのも「年の功」ですぞ。

回答者

山本一力 作家。昭和23年生まれ。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。最新刊は「深川駕籠 クリ粥」(祥伝社)。近著に「湯どうふ牡丹雪 長兵衛天眼帳」(KADOKAWA)、「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「ジョン・マン7 邂逅(かいこう)編」(講談社)など。

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