軽減税率の導入で8%と10%に税率が分かれた消費税を正確に納税するためのインボイス(適格請求書)の制度開始まで1年を切る中、事業者への周知が課題となっている。調査会社の集計では、全国の登録率は10月末時点で4割弱にとどまる。令和5年10月の制度開始に間に合わせるためには同年3月末までの登録申請が必要で、各商工会議所なども支援策を強化している。
「インボイスは良い制度だと思うが、事業者から『仕組みが分かりにくい』との声も聞く。官民が協力して周知していく必要がある」。大阪商工会議所の鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス副会長)は11月18日の定例会見でこう語り、制度の理解が進まない状況に懸念を示した。
同制度では、消費税額を正確に把握するため、売り手の企業が買い手の企業に対し消費税の適用税率や額を示す適格請求書を交付する。発行する事業者は税務署に登録する必要があり、来年10月の制度開始時点で登録事業者になるためには、原則として来年3月末までに登録申請を済ませなくてはならない。
これまで消費税の申告義務がなかった年間売上高1千万円以下の免税事業者にも深く関係する。免税事業者はインボイスを発行できず、取引相手が消費税の仕入れ税額控除ができなくなるため、取引先から外される恐れもある。登録は任意だが、登録事業者になれば課税事業者として消費税の申告を行う必要が生じる。