塩野義コロナ薬、後遺症治療予防の長期データも収集へ

塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」(同社提供)
塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」(同社提供)

塩野義製薬が開発し、国産初となる新型コロナウイルス感染症の飲み薬として11月22日に緊急承認された「ゾコーバ」の医療機関への提供が始まった。咳(せき)や発熱などの症状を早く改善する効果があり、海外でも実用化を目指している。臨床試験(治験)では体内のウイルス量を減少させる「抗ウイルス効果」も確認。同社は症状が長引く後遺症の治療や予防への応用も視野に長期的データを積み重ねる方針だ。

一般流通に移行も

ゾコーバは軽症・中等症患者向けで、基礎疾患などの重症化リスクの有無にかかわらず処方できる。発症後72時間未満で使用を開始すれば、オミクロン株に特徴的な咳や発熱、疲労感などの5症状の消失までの時間を約24時間短縮する効果を確認している。

政府は塩野義から購入した100万人分について供給を開始した。供給量が限られていることから、2週間程度は米ファイザーの飲み薬「パキロビッド」の処方実績がある約2900の医療機関や約2千の薬局に供給先を限定する。その後は都道府県が選定する医療機関に対象が広がる。

塩野義は需要の伸びを想定し、「(通常の医薬品販売となる)一般流通への移行について厚生労働省との相談を進める」としている。国に納入済み分を含めて来年3月までに300万人分超、年間1千万人分の生産体制を整備した。

海外でも申請へ

海外では韓国、中国、米国、欧州で承認申請を目指している。国内と同じく無症状・軽症患者への治験を韓国とベトナムで進めているほか、欧米で入院患者らへの治験を実施。患者の同居家族を対象にした発症予防試験も日米などで来年1月から始める予定だ。

生産体制は海外向けに今年末までに中国の工場をフル稼働する準備が完了し、米国でも年明けに稼働が可能となる。スイスに本部を置く公衆衛生機関「医薬品特許プール(MPP)」とライセンス契約を締結し、117の低中所得国に供給する体制も整えた。

塩野義は令和5年3月期に新型コロナ関連の売り上げ1100億円を見込み、大半が国内でのゾコーバの販売が占める。同社は「海外で供給が始まれば業績に上乗せできるが、承認が年度内に間に合うかは分からない」としている。

後遺症治療に光

同社がもう一つ、ゾコーバに期待するのは新型コロナの後遺症の治療や予防への可能性だ。

後遺症の原因は不明な部分が多いが、新型コロナの後遺症の治療にもあたってきた昭和大病院の相良博典病院長は「後遺症予防には、新型コロナと診断されたら早期に治療介入できるかどうかが重要。炎症反応期に移行する前に早くウイルスを押さえ込むのが効果的だ」と指摘する。その点で、点滴薬などに比べても投与しやすい飲み薬への期待も大きい。

緊急承認を了承した11月の厚労省の専門家会議でも「罹患(りかん)後症状(後遺症)に苦しむ人にとって朗報なのか検討してほしい」「深刻なのは罹患後症状の長期化。効果はどうなのかデータがほしい」との声があった。

塩野義が9月に出した最終段階の治験の解析速報によると、投与4日目(3回投与後)に投与前と比較して体内のウイルス量が300分の1に低下した。ウイルス量と後遺症の因果関係は十分に証明されていないが、塩野義の手代木功社長は11月24日の記者会見で「後遺症で職場復帰できないなどの症例が欧米中心に増えており、長期に継続してデータを積み上げたい」と述べた。同社にはウイルス量に着目した治験について海外の研究機関から申し出があり、協議を進めている。これまで国内で治験を受けた患者への追跡調査でもデータを収集する方針だ。

相良院長も「ゾコーバの安全性や効果を確かめながら、後遺症予防効果についても積極的に検証してもよいのでは」と話している。(牛島要平)

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