2大会連続で1次リーグを突破した日本代表が5日(日本時間6日未明)の決勝トーナメント1回戦で対戦するのは、前回準優勝の難敵クロアチア。ワールドカップ(W杯)では、1998年フランス大会(●0-1)、2006年ドイツ大会(△0-0)に次ぐ、3度目の対戦である。
牽引(けんいん)する主将のルカ・モドリッチのプレーを初めて見たのは、06年ドイツ大会前にウィーンで行われたオーストリアとの親善試合だった。当時、クロアチアを率いていたのはズラトコ・クラニチャル監督。司令塔役は息子で21歳のニコ・クラニチャルが務めており、20歳のモドリッチはライバル視されながら、控えに甘んじることが多かった。
ズラトコとニコの関係は「親子鷹」と話題を呼ぶ一方、クロアチア報道陣からは「公私混同ではないか」と批判する声も上がっていた。ウィーンでの親善試合でもニコは精彩を欠き、交代出場したモドリッチの方が存在感を発揮していた。
今ではありえないが、試合後は報道陣も記者席からピッチに降り、目当ての選手を自力で捕まえてインタビューする取材方法だった。司令塔争いについて話を聞くべく、モドリッチに突撃取材した。
当時のモドリッチは技術の高さが際立つ一方で、線が細いイメージがあった。「日本のメディアだが、ニコとの関係について話を聞かせてほしい」と英語で問いかけると、足早にピッチを後にしながら「英語は話せないから」と断られた。
「話せない」の言葉は英語だったけど…と思いながら引き下がったが、今から思えば、もう少し食い下がればよかった。前回ロシア大会で最優秀選手に選ばれ、バロンドールを獲得するビッグネームになるとは思ってもいなかった。断ったのはナーバスになっているのだろうと解釈したが、したたかだったのかもしれない。今はそんな気がする。(編集委員 北川信行)
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取材した過去のW杯や欧州選手権でのエピソードを紹介します。