スペイン慌てさせた猛プレス 前田の献身、同点弾に

スペイン戦で相手GKのシモン(左)にプレスをかける前田。献身的なプレーがゴールに結びついた=12月1日、ハリファ国際競技場(蔵賢斗撮影)
スペイン戦で相手GKのシモン(左)にプレスをかける前田。献身的なプレーがゴールに結びついた=12月1日、ハリファ国際競技場(蔵賢斗撮影)

大会随一の華麗なパスワークを誇る強豪にもひるむことなく、最前線からボールを追い続けた。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグE組の日本は1日(日本時間2日)、スペインに2-1で逆転勝ちし、組1位で決勝トーナメントに進んだ。チームを勢いづける同点ゴールの起点となったのは、前田大然(セルティック)が相手GKに仕掛けた猛烈なプレスだった。大きな勝利にも「でも、今このチームが目指しているのはそこではない」。守備で殊勲を挙げた25歳のFWはおごることなく先の戦いを見据えた。

サッカー以上に大事なもの

労を惜しまず繰り返してきたダッシュが実を結んだのは、後半3分だった。パスを受けた相手GKのシモンに、前田が猛然と迫る。苦しまぎれに蹴ったボールは伊東純也(スタッド・ランス)から堂安律(フライブルク)に渡り、反撃の口火となる同点ゴールが生まれた。

大阪府太子町出身の前田は中学卒業後、山梨学院高にサッカー留学したが、1年冬に部から一時的に離れたことがある。チームの規律を乱す行為を重ね、除籍されたのだ。「サッカー以上に大事なものがある。それを示さなければいけなかった」。監督だった吉永一明さん(54)は振り返る。

部に復帰したのは約1年後。担任教諭や同級生から様子を聞いた吉永さんが「人のために、ということが理解できるようになった」と再び迎え入れる決断をした。この謹慎期間を境に前田は大きく変貌を遂げる。「攻守で全力で走る場面が増えた」(吉永さん)と献身的なプレーを惜しまなくなった。今のスタイルは高校時代のほろ苦い体験を経て築かれたものだ。

誰よりも走る

スペイン戦は後半17分でベンチに退いたが、スプリント回数60回はフル出場した選手を含め両チーム最多。ゴールこそならなかったものの、誰よりもチームのために走り続けた証しだ。「多くの人に支えられてこの舞台に来た。そういう人たちの思いを背負って普段から生活している」。初めてのW杯で、感謝の思いをプレーで体現してみせた。(ドーハ 大石豊佳)

会員限定記事会員サービス詳細