安倍晋三元首相が提起した「防衛国債」発行は、世界最大の債権国日本でこそ可能な戦略的財源といえる。だが、岸田文雄政権は防衛費増額財源について「幅広い税目での国民負担」、すなわち増税に傾斜している。それでは経済力を含めた国力挽回はおぼつかない。
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防衛力増強は、中国の習近平体制3期目の今後5年のうちに勃発しかねない台湾有事という緊急性を帯びている。そこで思い出したのは昭和57(1982)年の英国対アルゼンチンのフォークランド紛争である。当時のM・サッチャー英首相は、戦時内閣から財務相を外した。「鉄の女」はその理由について、英議会で「われわれはどれほど費用が掛かるかといった観点から軍事を考えてはならない」と説明した。当時の英国の緊急事態と単純に比較はできないとしても、増税主義の財務相や、「有識者」会議の増税案を真っ先に聞く耳の岸田首相の対応は、平時の意識のままのようだ。