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病気や老化と相関「エンテロ(腸)タイプ」食事傾向で推測

腸を変えると体が変わる! 病気、老化、脳やメンタルとの相関が明らかになってきた「腸内フローラ(腸内細菌叢(そう))」。自分の腸内を知りたい人が増え、採便を郵送する検査キットは「ふるさと納税」の人気返礼品にもなっている。そんななか、日本人の腸内を5つに分類した「エンテロ(腸)タイプ」に注目だ。「食事の傾向で腸内環境が推測でき、健康リスクがわかる」などと話題で、食生活を考えるきっかけを提供している。

健康長寿研究を進めるために

筆者が腸内フローラ検査を受けたところ「実年齢+13歳」という悲惨な結果が届いた。半世紀あまりの人生で、これという病気やインフルエンザ、新型コロナウイルスにもかかったことがなく、血液検査の数値も正常。不思議に思って検出細菌一覧を見ると「未分類」と記された不明な細菌が多くを占める、特殊な腸内環境ということだった。

「計算上はマイナス評価でも、実際は良い働きをしている細菌かもしれません」との説明に、謎が深まる。食生活について「パスタは小麦製でなく豆由来の麺を食べている」などと伝えると、「エンテロタイプなら『B』ではないか」と指摘され、興味が湧いた。

それは、京都府立医科大大学院の内藤裕二教授らによる研究成果「腸内環境評価システム」が基になっている。日本人男女1803人の腸内フローラを測定、解析し、AI(機械学習)により5タイプに分類している。今年3月に論文が発表され注目が集まった。

内藤教授は「腸内細菌は食だけで決まるものではない。生まれ育ちから現在までの環境要因も大きい」と前置きしたうえで、「大ざっぱなくくりですが、食生活を考えたり、見直したりするきっかけにしてもらえれば」と取材に応じてくれた。図表は、取材をもとに5タイプの傾向をまとめたものである。健康リスクはBとEが低く、A、Dが特に危険でCも高い。

タイプごとに多い腸内細菌は▽A=ルミノコッカス▽B=バクテロイデスとフィーカリバクテリウム▽C=バクテロイデス(フィーカリバクテリウムは少ない)▽D=ビフィドバクテリウム▽E=プレボテラ。

糖尿病リスクが高いDタイプに、いわゆるビフィズス菌が多いのは意外だ。

「良い菌であることは確か。Dタイプに多いのは糖質による大腸の炎症と闘うために、ビフィズス菌が増加している可能性もある。菌の働き方はさまざまで、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という分類はもうやめた方がいいと思う」

また、健康に分類されるEタイプは野菜や魚中心の食生活だが「同じ和食でも、砂糖や塩の使用で評価が変わるので注意して」。

甘味は砂糖や人工甘味料でなく、オリゴ糖などの天然甘味料への置き換えを推奨。菌のエサとなる食物繊維を積極的にとる生活改善により、2週間ほどで腸内環境が変化するという。

「健康長寿研究を進めやすくするため、自分たちのバックデータを生かして分類している。仮説をもとに検証を進め、エビデンス(科学的根拠)は順次発表していきます」

内藤教授が開発に携わった腸内フローラ検査キットは、6月から大阪府枚方市のふるさと納税に採用され、半年間で約1200件の申し込みが殺到する1番人気の返礼品。全国から続々と検体が届き、研究の深化に役立てられるという。

「○菌○株、○億個」の商品争奪戦も起きる腸活ブームだが、日々何を食べるかが〝超(腸)大事〟。落ち着いて基本を省みたい。(重松明子)

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