【ロンドン=板東和正】9月に死去したエリザベス英女王の側近だったスーザン・ハッシー氏(83)が、英国籍の黒人女性(61)に人種差別的な発言をしたとして批判を受けている。英王室は今月1日までに事実を認め、深い遺憾を表明。ハッシー氏は王室の役職を辞任した。
昨年には、女王の孫、ヘンリー王子(38)とその妻、メーガン妃(41)が王室内で人種差別的な扱いを受けたと告白しており、今回の不祥事を受け、王室内部の人権問題が再燃している。
英BBC放送などによると、ハッシー氏は女官として長年エリザベス女王に仕え、昨年執り行われた女王の夫、フィリップ殿下の葬儀で女王に付き添った。王位継承順位1位のウィリアム皇太子(40)の名付け親として知られ、近年はバッキンガム宮殿でのイベント開催に携わっていた。
ハッシー氏は11月29日にバッキンガム宮殿で開かれたカミラ王妃(75)主催のレセプションで、出席した慈善団体代表の黒人女性ヌゴジ・フラニさんに出身地を尋ねた。フラニさんは英国生まれだと答えたが、ハッシー氏は「本当はどこから来たのか」「一族の出身地はどこか」「ここ(英国)に最初に来たのはいつ?」などと執拗(しつよう)に聞き続けた。
フラニ氏は一連のやり取りをツイッターで投稿。英メディアの取材に「まるで尋問のようだった。肉体的な暴力ではないにせよ、これは虐待だ」と批判した。
問題を受け、王室は同月30日、「この出来事を重く受け止めている」などとコメント。皇太子の広報担当者も「(ハッシー氏の)発言は容認できず、(同氏が)ただちに辞任したのは適切なことだ」と述べた。 英メディアによると、英史上初のアジア系の首相に就任したスナク氏は王室での出来事について発言するのは「正しくない」とした上で「人種差別を目にしたときには立ち向かわなければならない」と強調した。
王室の人権問題をめぐっては、メーガン妃が昨年3月に放送された米CBSの番組で、長男アーチー君を妊娠中に王室内から「生まれてくる子の肌の色はどれくらい濃くなるのか」と懸念を示されたことを打ち明けた。共に番組に出演したヘンリー王子も、長男の肌の色に関する発言を耳にして「困惑し、ショックを受けた」と振り返った。
英スカイニューズ・テレビは今月1日、「ハッシー氏は王室を代表する特別な存在だった」とした上で「王室が再び人種差別をしたとして非難されることになった」と強調。女王の死去に伴い即位したチャールズ国王(74)の支持にも影響を与える恐れがあるとの認識を示した。