「差別や偏見に怒り」「言葉の〝ねじれ〟が好き」 文芸賞の2氏 創作への思い語る

第59回文芸賞を受賞した日比野コレコさん、安堂ホセさん(右から)=東京都内
第59回文芸賞を受賞した日比野コレコさん、安堂ホセさん(右から)=東京都内

強いメッセージ性を持つ物語と、多彩な音色を奏でる言葉の織物…。公募の新人文学賞である第59回文芸賞(河出書房新社主催)を射止めた2作は、小説という表現形式の器の大きさを教えてくれる。受賞した2人が都内で記者会見し、創作への思いを語った。

「自分の小説はメッセージが重要。思想の強い『文芸』は、それを受け入れてくれそうだな」と応募の理由を明かしたのは東京都在住の安堂ホセさん(28)。受賞作「ジャクソンひとり」では、アフリカの国と日本とのハーフである主人公が、似た外見を持つ3人と入れ替わることをもくろむ。映像作品のようなスピード感あふれる語り口で、属性で人間を一括りにしてしまうことの暴力性を浮かび上がらせている。

自らの体験、そして怒りが作品のベースにある。「人種に関するちっちゃな差別とかセクシャリティーに関する偏見とかにムカついて…という感じで。それを極端な形で表現したい。当事者にとって元気が出るような小説になればいいんですけれど、関係ない人にも刺さるようにしたい」

もう一人の受賞者、日比野コレコさん(18)は大阪府在住の大学1年生。

受賞作「ビューティフルからビューティフルへ」は自己肯定感を抱けずに絶望の淵にいる少女ら高校生3人の交流を、それぞれの視点から描く。国内外の文学や歌詞などの引用を巧みにちりばめながら、軽やかで強度のある言葉の織物を作り上げている。

「言葉の〝ねじれ〟が好き。ことわざや慣用句とかをちょっともじったりすると、『わあ、面白いな』って」。禅語である「日日是好日」に独自のアレンジを加えた筆名にも、そんな遊び心がうかがえる。小学生のころから一人、ノートに物語を書いて楽しんでいたという。

「小説は一人だから読めるもので、その閉鎖的な感じがうれしかった。重圧は全然ない。そのときに自分が感じたことを小説に面白く昇華できれば」(海老沢類)

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