今年の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売状況は、最大市場の中国だけで1~10月で530万台となり、既に昨年の年間販売台数352万台を大幅に上回っている。年間の販売台数は、全世界では1000万台を超えると予想されている。
それに伴い、「eアクスル」と呼ばれるEV主要部品の採用が欧州、中国を中心に広まってきた。eアクスルとは、モーター、インバーター、トランスミッションを一体化した部品である。なぜこれほどまでeアクスルの採用が広がるかといえば、最大のメリットは、統合による部品の小型化、品質向上、コスト低減であろう。しかし、課題として、開発する側にシステムインテグレータとしてのマネジメント能力のみならず、自動車メーカーから期待される衝突安全性への事前検討があると思われる。
自動車の場合、衝突安全性は北米、欧州、中国など地域ごとに異なり、それぞれの自動車メーカーは対応に苦心してきた。エンジンに代わるeアクスルとなれば、部品メーカーが開発すると言っても、単に3つの部品を1つにするだけでなく、シミュレーション解析などを通じて、自動車メーカーの衝突安全性検討の一翼を担うことも期待される。この点が自動車用eアクスルの最も難しい点だろう。
一方、今後のeアクスルの新たな用途展開を考えると、欧州を中心に広がり始めている電動建設機械や電動農業機械がある。その場合、自動車のような衝突安全要件は不要となることから、同じeアクスルと言っても仕様が異なる。つまり、さらなる小型化、軽量化、コスト低減が可能であり、新たな用途として市場拡大していくように思われる。e-モビリティー化が進むことにより、まだまだビジネスチャンスがあるように思えてならない。
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わだ・けんいちろう 新潟大工卒。平成元年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、17年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。25年3月退社。その後、27年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。66歳。福井県出身。