パリの窓

パンに厳しいフランス人 有名店でもあっという間に客離れ

パリには日本のようなコンビニはないが、パン屋には事欠かない。わが家から徒歩10分圏内だけで、ざっと10軒もある。

パン屋はフランス語で「ブランジュリー」と言うが、本当はちょっと違う。ブランジュリーを名乗るには、パンだねをこねて発酵させ、焼き上げるまでの過程をすべて同じ店でやることが条件。法律で厳格に定められている。デパ地下にあるような有名チェーン店は、たいてい冷凍だねを店内で焼いているので、この範疇に入らない。

とはいえ、ブランジュリーが必ずしも最高にうまい、というわけでもない。激戦区のわが界隈で人気があるのは、パリ郊外の農家が出す店。父が作った小麦を息子がひいて石窯で焼き、毎朝店に運んでくる。「パン置き屋」と呼ばれる形態で、バゲットやクルミ入りなど7種程度をゴザに並べて売っている。見た目は地味だが、どれも皮が香ばしく、かみしめると口中に麦の甘みが広がる。

フランス人はパンに厳しい。有名店も油断していると、あっという間に客が離れる。つい最近、創業90年の老舗の経営が傾き、民事再生手続きの適用に入った。昔風の田舎パンは、日本に空輸されるほど人気があった。新型コロナウイルス禍で外国人客が減り、売り上げが落ちたのが響いたらしい。(三井美奈)

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